96話 フラフレは体調を崩す(後編)
「治してくれてありがとうございます」
「いえいえ、全てはフラフレ様が成したことですよ」
「ところで、フォルスト様にも同じようにしたのですよね? 昨日はそうとう辛そうだったのですが……」
「陛下はかなりの重症でしたから。おそらくフラフレ様の野菜で万能薬を作れていなかったら危なかったでしょう……」
「そんなに……!?」
フォルスト様は日頃見えないところでもリバーサイド王国のために頑張っている。
そのうえで大規模な川の工事まで頑張っていたのだから疲れて当然だし、無理していたのだろう。
「はぁ、もはやフラフレさんは国王の命までも救ったと言っても過言ではありませんよ。それなのに何ごともなかったような反応をされるなんて」
「そんなことよりも、フォルスト様が無事で良かったよぉ……」
「たったそれだけ……? もっと報酬などを強請っても良いでしょう!?」
「んー別にいらないかな。それに、毎日ご褒美もらっているんだよ」
「たとえば?」
「おいしいごはんとか、どろんこ遊びの許可とか、お風呂とか」
「…………」
ミーリが呆れているようで、完全に固まっている。
いや、もしかしたら羨ましいという表情なのかもしれない。
私はすでにご褒美だらけの生活をさせてもらっているのだ。
これ以上求めたらバチが当たるだろうし、そもそも欲しいものなどない。
みんなが楽しく生活できればそれで良い。
王宮直属主治医のおかげで身体も回復してきたことだし、今日も元気にどろんこ遊びを……。
と、思っていたのだが、アクアに止められた。
「今日のところはお休みください」
「身体はいつもどおりになったよ?」
「陛下にも同じことを言いましたが、無理をしてはいけません」
「うぅ……、それを言われると分かりみが」
フォルスト様に次会ったら、『無理しちゃダメですよ』と言うつもりだった。
きっとアクアたちも私に対して同じことを思ってくれているのだろう。
私はおとなしくベッドに横になることにした。
「みんな、心配してくれてありがとう」
「私は別に心配して来たわけじゃありませんからね! 早くフラフレさんが元気になってくれないと聖女の特訓を教えてもらえなくて困るから、私のために早く元気になってもらわないと困るのです!」
ミーリはツンツンしながらも、私のことを心配してくれているのだろう。
もう無理は絶対にしないことに決めた。
しかし、今まで無理したことってないんだよなぁ……。
「フラフレ! 大丈夫か!?」
「フォルスト様!? 重症って聞きましたが……」
「フラフレまで倒れてしまったのだろう。私の体調不良など気にしている場合ではない!」
フォルスト様はフラフラになりながらも、私のそばに寄ってくる。
私はあわててベッドから降りて立ち上がったが、急に動いたらクラクラしてしまった。
よろけてフォルスト様の身体に全身を預けてしまった。
「もうしわけございません……」
「人のことを言える立場ではないが、無理をしてはならない」
本音としては私の体調不良を知られ、フォルスト様が駆けつけてくださったことは嬉しい。
だが、人のことは言えないがフォルスト様には無理をしないでほしい。
「フォルスト様は部屋で休んでいてください……」
「フラフレにもしものことがあれば私は一生後悔してしまう。なにがあっても駆けつけるに決まっているだろう」
「はひ……!?」
「ともかく無事に会話ができて……良かった」
フォルスト様はそのままよろけてしまい、私も同時に倒れそうになる。
間一髪のところで、フォルスト様は王宮直属主治医に、私はアクアとミーリに支えられた。
「二人とも無理をしすぎです。このままフラフレ様のベッドで二人仲良く寝られますか?」
一緒に寝るーーーーーーー!?
そんなハードルの高すぎることを言わないでほしい。
寝るどころかドキドキしてしまって眠れない気がする。
私が慌てふためいている最中、フォルスト様も顔を赤らめながら動揺していた。
「アクアよ……。それはさすがに心臓が死んでしまう」
「フラフレ様のことが心配なのでしょう?」
フォルスト様は私のことをジッと見てきた。
このタイミングで見られるのはあまりにも恥ずかしい。
恥ずかしさのあまり、いや、それ以上に急に動いてフラついていたのもあるだろうけれど、急にめまいがしてしまい気を失ってしまった。
次に目を覚ましたとき、ベッドの横にはフォルスト様がそばにいた。
フォルスト様はベッドではなく、椅子に座ったまま私の右手を両手で握ってくれていたのだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
コミカライズ作業も現在進行中ですので、告知可能になったらSNSにて報告します。
また、どろんこ聖女のWEB版の更新ですが、次回は8月前半の更新とさせていただきます。
毎週金曜日の19時でしたが、8月以降は曜日と時間も変更します。
少々期間が空いてしまいますが、お待ちいただけますと幸いです。





