93話 フラフレは看病がしたい
ここ数日はミーリと一緒にどろんこ遊びをしているため、より楽しくなっている。
ミーリは聖なる力を上げるため今日から花畑へ行くから、いつもどおりのどろんこ遊びに戻る。
ミーリはいつも必死な感じではあるが、きっとそのうち一緒に楽しく……。
そんな期待をしながら今日も朝ごはんをいただきに食堂へ来たのだが違和感に気がつく。
「あれれ？ フォルスト様はまだ寝ているのかな？」
なぜかアクアは困った表情をしていた。
「いえ……。本日の陛下は表に出られない状況でして」
「え！？ なにかあったの？」
「その……。体調を崩してしまいまして部屋で寝込んでおります」
「大変だ！ すごく大変だ！！」
ここ最近、フォルスト様は川の工事作業に出向いていたため、大変忙しそうな日々だった。
工事だけでなく本来の国務もしっかりとやっているそうで、寝る時間はあるのだろうかと心配してしまうほどだ。
私に構っていたらより寝れなくなってしまうだろうし、そっとしている。
そのため、一緒にいられるのも食事をするときくらいだ。
食卓テーブルに私の分しか用意されていないから、おかしいと思った。
「フラフレ様はしっかりと食事を摂ってください。そのように言付けをいただいておりますので」
「ことづけ？」
「つまり、陛下がフラフレ様に言いたいことを私が代わりにお伝えしているということですね」
「うん、わかった。じゃあしっかりごはんは食べるね。食べたらフォルスト様のところ行っても良い？」
「ダメです」
アクアから即答で言われてしまった。
会っちゃいけないなんて言われたことは、今までにない。
「なんで？」
「風邪がうつったら大変です。つまり、フラフレ様も大変な思いをしてしまう可能性があるからです」
「でもフォルスト様が心配だよぉ……」
「大丈夫です。王宮直属主治医の診察もしていますから」
その名前を聞いて、私の顔が青ざめた。
きっと今ごろ、フォルスト様も痛い思いをして大声で叫んでいるに違いない……。
「よけい心配だよぉ！！」
「フラフレ様は王宮直属主治医のことをひどく警戒されているだけです。彼は国で一番の凄腕医師なのですからね？」
「でも、あのプスってされるやつは……」
私にはトラウマが植え付けられている。
それも、何度もプスプス刺されてきた。
決して王宮直属主治医が嫌いというわけではないのだが、プスプスが大っ嫌いでそっちに警戒している。
「あの行為ができる資格がある者自体が、世界中でも手で数えられるほどしかいませんからね？」
「どっちにしてもフォルスト様の体調だって心配だよ……。看病したいんだよぉ」
「看病と言いますと？」
アクアに言われてから考える。
しばらく沈黙したあと、思いついたことを伝えた。
「ごはん食べさせたり、フォルスト様の顔色眺めたり、お願い聞いたり」
「もはや私が止めてもフラフレ様はあらゆる手段を使っても会いにいかれるでしょう？」
「そ、そそそそそんなことは……」
「顔に出ていますので。仕方ありませんね。どうせしょうもない姑息な手段を使って会いに行こうとするのはわかるので、堂々と行ってきてください」
「姑息な手段って……。なにをしようとしたかわかるの？」
どうやったらアクアの警戒網を振り切って会いにいけるかも考えていた。
金貨を全部フォルスト様に渡したため、今は部屋に金貨が飾られていない。
そのため、金貨を部屋に設置してアクアの身動きを封じることは不可能。
だとすれば、悪いとは思いつつもあの手しかない。
「そうですね。金貨が盗まれたユメをみて怖かったとか、王宮直属主治医から呼び出されて逃げてきたとか」
「アクアって私の頭の中が読めるの？」
アクアに全部当てられてしまった。
本当にアクアはすごい。
そのうえで私の気持ちを尊重してくれるのだから、もう変なことを考えるのはやめよう。
「図星ですね。そのようなことをするくらいなら堂々と行ってきましょう。あとのことは私が処理しますので」
「うん、ありがとう！」
「ただし、フラフレ様も風邪がうつってしまうリスクがあることだけはご理解ください」
「うん。大丈夫ー！」
「はぁ……これで万が一にでも体調を崩されたら、私はどう責任を取れば良いのか……」
アクアは大きなため息をはいていた。
私は聖女なんだし、今まで風邪をひいたことなんてなかった……と思う。たぶん。気がつかなかっただけかもしれないけど。
アクアの背中をぽんぽん叩いて安心させる。
「この国に来てから元気いっぱいだし、きっと平気だよ〜」
「根拠のない自信はどこから来るのやら……」
一応、アクアの許可も得たことだし、しっかりと朝ごはんを食べてから真っ先にフォルスト様の部屋へと向かった。
