88話 フラフレはミーリにどろんこ遊びを教える
「は!? こんなことを公爵令嬢と言われている私が……?」
「うん♪ 楽しいよっ!」
「私のことをバカにしてるでしょう!」
ミーリを連れて王宮の農園にやってきた。
聖なる力を向上するためには、農園で土や虫たちと戯れることがなにか関係があるのではないかと考えた。
そこで、ミーリと一緒に農園で遊ぶのが一番だと思った。
しかしミーリの反応はイマイチで、嫌がっている。
アクアも苦笑いを浮かべたまま見守っているだけだ。
「ねぇ、こんなことして聖なる力が上がるの?」
「うーん、それはわかんない」
「はぁ!?」
「えぇと、私の実体験だけなの。ここで遊んでいたら前よりも聖なる力が上がったみたいなんだよね」
「前よりって、ハーベスト王国にいたときよりも!?」
「たぶん」
確証がない。
聖なる力のことを考えていたとき、今までのことを思い出してみた。
すべては農園で楽しませてもらっていたら、うまくいっているような気がする。
ならば、ミーリもここで楽しめれば聖なる力も上がるんじゃないかと推測した。
「ごめんね曖昧で」
「はぁ。頼れるのはフラフレさんだけだし、やるしかないのよね……。で、なにすれば良いのよ!?」
ミーリもやる気になってくれたみたい。
これなら私も堂々と教えることができる。
楽しくなってきたぞ!
「えぇとね、まずはこうやってダイブ!」
「はぁぁぁあああああ!?」
私はいつものように農園に飛び込んで土へ向かってダイブ。
顔から足までどろんこまみれになる。
これが最高〜。
ふとミーリのほうを振り向くと、口を開けたまま放心状態のようになっている。
私のほうにダイブしてくるかと思ったら、アクアのほうへ向かってしまった。
「アクアさんって王女でしょう? なんでフラフレさんを止めないのです?」
「最初は止めましたよ。ですが、これがフラフレ様の生きがいのようになっていますからね。それに、この行いによってリバーサイド王国は救われているのですからなにも言えません」
「うぅ……。でも、高貴な私がこのようなことをしなければならないなんて……」
「こればかりはミーリさんのお気持ちもわからないでもないですが、聖女として頑張るのでしょう? ハーベスト王国を救うために」
「そうですわ! そのためにわざわざこんな遠くまで来たのですから」
「ならば今はフラフレ様のことを信じて頑張るしかありませんよ」
「ですわね……。でも、あんなことをして聖なる力が上がるとはとても思えませんが」
「それは私も同感です。ともかくやるしかありませんね。いってらっしゃい♪」
「ひゃ!!」
アクアがミーリの背中をポンっと押してミーリが農園内に入ってきた。
ミーリとアクアはなにか話していたみたいだけど、やっと来てくれた。
「ひぇ……ベチョベチョ!」
「雨降らせていたばっかりだからね。でも、このネチョネチョ具合が良いんだよぉ」
「全く共感できません!! それにこれはもうネチョネチョじゃなくてベチョベチョでしょう!」
「まぁまぁ、とにかくミーリも一緒にべちょべちょしよー!」
「ぎゃ!」
私はミーリの手を引っ張って、一緒にごろんとした。
別にいじわるをしているわけではない。
ミーリの聖なる力を向上させるためにも、一緒に農園で楽しくしなければならないのだ。
「屈辱だわ。こんな姿、ハーベスト王国の人たちには見せられない……」
「楽しくないの? 野菜も元気に育つよー?」
「野菜は大好きですわ。でも、自分自身がこんな泥まみれになるなんて嫌です」
ハッキリと否定されてしまった。
そうは言いつつも、ミーリは渋々といった感じでも土を両手で掴み、それを眺めていた。
「うぅっ、これも国のため……。で、この土をどうしたら良いのです?」
「どうもしないよ。仲良くしているだけ」
「ナカヨク……?」
「うん。土も虫も大好きだからね。あ、ほら。ミーリが持っている土の中からもミミズさんが」
「ぎゃぁぁぁああああああああっ!!」
ミーリは勢いよく土を手放してしまう。
落としたところは土の上だからミミズに怪我はないと思う。
でも、ちょっと乱暴だなぁ。
「聖なる力の特訓するんでしょ?」
「そ……それはそうですが……」
「じゃあ楽しもうよ。おいしい野菜も育つみたいだし」
「野菜も!? そういえば、フラフレさんが育てている野菜って……」
ミーリの嫌そうだった表情が少しだけ変わった。





