82話 フラフレは国の過去を知る(前編)
孤児院のみんなと再会したあとのこと。
私は部屋に戻ると、一緒についてきたアクアが深く頭を下げてきた。
「黙っていて申しわけございません」
「ん? なにがー?」
「私が王女だったことです」
そういえばガイハルが私に対して、『アクア王女様』と言っていたっけ。
アクアがわざわざ謝ってくることから考えると、本当に王女なのだろうと判断できた。
「別に謝ることじゃないと思うけれど。あ、えぇと……思います?」
「それです。フラフレ様の専属メイド役をするうえで、最初に私の本来の身分を明かしてしまうと、フラフレ様が気軽に接し辛くなってしまうのではないかと思ったため黙っていました。ですが、これからも今までどおり敬語は使わず関わっていただけたら……」
「うん、わかった」
「あっさりと……さすがフラフレ様です」
アクアが私に対し、出逢ったころから気遣ってくれていたことはよくわかる。
今までと同じように接することを望んでくれているのなら、なんの問題もない。
「うーん、最初会ったときに王女様って言われていたら、わからなかったかもしれない。でも、ずっと一緒にいるから、私にとってはアクアはアクアだよ」
「そう言っていただけるとありがたいです」
「第三王女って言っていたけれど、もしかしてこの王宮に他にも王女様がいるの?」
「いえ、王族で残っているのは私だけです。私以外全員、国を出ていきましたので……」
「はい?」
アクアの表情が少し暗くなってきている。
喋りたくないことなら無理しなくていいよと言ったが、首を横に振った。
「フラフレ様は今後王妃になる可能性があります。リバーサイド王国の真実も知っておく必要があるでしょう」
「真実? あ、そういえばアクアが王女だってみんな知らなさそうだったような……」
「はい。知っているのは陛下と孤児院から来られた方々、そして国に残られた王宮の一部の者しか知りません」
「残られた……?」
まさかの国外廃棄処分を王族全員がされてしまったとでもいうのだろうか。
話を聞いていた私もゾッとしてきてしまった。
「今は見違えるほど豊かな国になりつつありますが、フラフレ様がここへ来られる前は国として機能すらしないほど崩壊していましたからね。富裕層だった一般人や王族、そして上位貴族などが揃って雨の降らない国へ避難したのです」
私が想定したことと逆だった。
どうせ避難するならみんなで避難すれば良いのにと思ってしまう。
このあたりのこともアクアに聞いておきたい。
「そうだったんだ。アクアは一緒に行かなかったの?」
「私は当時出逢ったフォルスト陛下たちを置いて出ていくつもりなどありませんでしたからね。それに、王女としての器は昔から持っていないと私自身でも自覚していました。それに両親たちは、自由奔放に生きている私を連れていく気などもなかったことでしょうし」
アクアと家族って仲が悪かったのかな。
私には家族がいないから家のことなどはよくわからないけれど、今話しているアクアが辛そうだ。
もう話は終わりにしたほうが良いよって言ったのだが、アクアは構わずに説明を続けた。
「お父様、つまりリバーサイド王国のひとつ前の国王陛下ですね。国中全員を避難させることは移動手段に限界があって不可能でした。そこで、今の陛下の勘の強さに期待してフォルスト陛下を新国王に任命したのです。彼ならなんとかやってくれるだろうと期待して」
「ずいぶんと勝手なんだなぁ……」
「そうですね。でも、完全に見捨てているわけではありません。年に二度、はるか遠くの国から支援として多額の金貨と財宝、可能な限りの保存食を送ってくださるのですよ。生きていけるために。そのお金で近隣の国から食料などをなんとか仕入れることもできました」
「完全に国を捨てたわけではないんだね。ちゃんと国を維持しようとはしているんだ?」
これまでの説明ではアクアの両親や王族ってあまり良い印象を受けなかった。
しかし、この国のことを完全に捨てたわけではないとわかった瞬間、イメージはがらりと変わった。
ところがアクアの反応は……。





