81話 フラフレは金貨を渡す決意をする
ようやく貯めるにたまった金貨を使うときがきたのだ。
私はワクワクしてしまい、ニヤニヤも止まらないまま金貨を使って欲しいと提案した。
「いただいていた金貨は、いつかフォルスト様が喜びそうなことに使えればと思っていましたので。必要なのは二千枚でしょう? それだったら部屋に飾ってありますし」
「しかし、フラフレが……」
フォルスト様も心配してくれているようだが、こればかりは仕方のないことでもある。
せっかく部屋中綺麗に飾った金貨がなくなってしまうと思うと、殺風景になってしまうのだ。
ハーベスト王国の極悪人たちからも守られた金貨たち。
一枚一枚に思い出がある金貨たち。
だが!
私の部屋のことよりも、フォルスト様が喜んでくれたほうが嬉しい。
またいずれ金貨を入手できる機会が来たら、そのとき再び飾れば良いのだから。
「フォルスト様の心配してくれる気持ちは嬉しいですよ。部屋の飾りつけに関しては平気ですから!」
「いや……、私が気にしているのはそこではないのだが」
「フォルスト様が困っているときに力になれれば、私としてもすごく嬉しいんです!」
部屋の外観よりもフォルスト様のほうが大事に決まっている。
比べることでもない。
私は強い意思を持って、真剣な視線でフォルスト様に送った。
すると、なぜかフォルスト様とアクアは呆れた表情を浮かべている。
ガイハルたちは口が開いたまま固まっているのだ。
私、なにか変なことでも言ってしまったのだろうか……。
「おい、フラフレ……。金貨二千枚って、そんな大金を寄付してしまうなんて正気なのか!?」
「もともとフォルスト様からいただいたものだし、最初はいらないですよって言ってたくらいだから」
「いらないって……」
ガイハルがとても心配そうな視線を向けてくれている。
しかし、私は金貨の使い方が今もよくわかっていない。
だったらフォルスト様に全て託してしまったほうが良いと思っている。
アクアはため息を吐きながら、ふっと笑みを浮かべていた。
「ガイハルさんたちはご存知ないかと思いますが、これがフラフレ様なのですよ。彼女はいつも国のことを第一に考えてくださり、そのためには自らの財産をも惜しまないという……」
「え? ちょっとアクア?」
「ほら。こうやってフラフレ様は毎度のこと誤魔化そうとしていますよね」
アクアに、『そうじゃないよ』と言おうとしたのだが、しゃべらないでくださいと視線で訴えているようだった。
私は大人しく黙っておくことにする。
「孤児院のメンツにこんなすげー奴がいたなんて。聖女ってだけじゃなく人としても……。金貨二千枚を平気で渡せる奴なんて今まで見たこともねぇ……」
「あ、えぇと、金貨は別に良いんだけれど、アクアの――」
「さすがフラフレ様です。金貨も惜しまず、国のために……」
アクアがやたらと私のことを褒め称えてくれている感じに見えてしまう。
私があわあわとしているうちに、孤児院のみんなはなぜか私のことを尊敬の眼差しで向けてくるようになってしまった。
「フラフレ……、いや、フラフレ聖女様!!」
「はい!?」
「一生尊敬して、一緒に過ごせたことも誇りに思って生きていきます!!」
孤児院の仲はどこへいったのやら。
なぜか私だけが尊敬されるような言葉遣いをされるようになってしまった。
孤児院のみんなとは特別な存在である。
だから、どうにかして対等に話せるようにしてほしいとゴネった。
「やれやれ……。これだけすげーことしているのに、それでも対等に話せとか……。本当にすげぇよフラフレは」
いや、そうじゃないんだって!





