79話 フラフレは孤児院のみんなと会うことになる
夜ごはん。
フォルスト様と一緒に食べているのだが、最近食事マナーに関することで指摘されることが減ってきた。
だいぶ慣れてきているし、だらしないことはしないように気を付けている。
しかし、時々どうしようもない状況になることもある。
「水がずいぶんと溜まってきた。そろそろ晴れるように祈ってもらうことは可能か?」
「やったぁぁぁぁああああ!!」
フォルスト様から再び晴れるようにしてほしいとのお願いがついにきた。
つまり、ようやくどろんこ遊びを再開できるということである。
もう何日も遊べなかったから、ウキウキが止まらないっ!
つい、フォルスト様に向かって嬉しい感情をそのまま口にしてしまった。
あ、食事の最中にこんな大声で……。
しかもフォークとナイフをもちながらバンザイのポーズまでしてしまった……。
「申しわけございません! 申しわけございませんっ!!」
すぐに何度も頭をペコペコする。
フォルスト様はフッと笑みを浮かべながら注意してくることはなかった。
「フラフレがそこまで感情的になるとは、よほど嬉しいのか?」
「はいっ! 晴れさせたら、農園で遊んで良いのですよね?」
「もちろん構わないしこちらとしてもありがたいとは思う。しかし……」
「はい?」
フォルスト様は申しわけなさそうな表情をしながら、ゆっくりと頬を掻いている。
「国の都合でフラフレを利用しているようで申しわけないとも思う」
「全然そんなふうには思いませんよ? むしろ、私がこんなに幸せな生活を毎日送れているのでもっとお礼がしたいくらいです」
「フラフレがどれだけのことをしてくれているのか自覚がないのか……」
「自覚はありますよ。王都に川を流して、晴れていても常に水がある状態にすれば毎日農園で遊べます。そりゃぁ全力で協力しますとも!」
私はワガママになってきているような気がする。
ハーベスト王国での幽閉生活から解放され、今は真逆で毎日が楽しいことばかり。
もっと楽しむにはどうしたら良いのかを考えるようになってきている。
しかし、どういうわけかフォルスト様やアクア、周りのみんなも喜んでくれているみたいだから、そりゃあ止められないというものだ。
「ならばいっそのこと、私も全力でこの企画を進めていかなければな」
「私にもできることがあれば、なんでもします」
「すでにフラフレにはやってもらっている。ところで、三日後に王宮に客人が来る予定だ。孤児院にいた者たちだよ」
「ついに会えるのですね!」
とは言っても、私は顔を見たところでわからないと思う。
フォルスト様のことすら全然わからなかったのだから。
孤児院にいたころは私が小さすぎたため仕方がないことなのかもしれないが、せめて顔を見て面影くらいは思い出したいな。
♢
今日はついに孤児院にいたメンバーが王宮にやってくる日だ。
アクアから、『成長した姿をしっかり見せましょう』と言われる。
普段着ないようなドレスを着させられ、化粧もしっかりと塗られた。
この状態でフォルスト様のいる玉座の間へまず向かうと、彼の様子がおかしかった。
「ぶっ……!」
「どうしてそっぽを向くのですか?」
「その……反則だろう」
「はい?」
「いや、なんでもない。私は幸せ者だと思う」
「なんだかよくわかりませんが、それなら良かったです」
やたらとフォルスト様の顔が赤いけれど、体調でも悪いのだろうか。
もしも体調を崩すようなことがあれば、私は全力でフォルスト様の看病をしたい。
「大丈夫ですか?」
「あぁ。フラフレよ、その姿で絶対に単独で外へは出てはならないぞ。危険な男がいるかもしれないからな」
「は、はい」
なぜか私のことを心配されてしまった。
このような格好は普段しないし動きづらいからしたくはない。
リバーサイド王国国王陛下であるフォルスト様の横に立つわけだから、そういう大事なときだけにしておきたいものだ。
なんとも言えない空気感だったが、王宮の兵士がこの部屋に入ってきて空気が変わる。
「陛下。お連れしました」
「ん。ここまで通したまえ」
国王をしているフォルスト様の表情になった。
前にこの姿を見たのは、ジャルパル陛下たちがここへ来たとき以来だ。
あのときのフォルスト様はカッコ良すぎたし、今日もまたその姿を見られるのかもしれない。
楽しみだ。





