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【書籍化】追放聖女のどろんこ農園生活 〜いつのまにか隣国を救ってしまいました〜  作者: よどら文鳥


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【WEB版外伝】フラフレのクッキー作り(後編)

「ミミズさんとかてんとう虫さんの形作ってみたんだけどどう?」

「このあと食べるのですよ。もう少し、食欲がわくものにしたほうが良いかと」

「そっかー。じゃあ……うーん」


 どうしようかな。

 なにを作ろうか迷う。

 こういうとき、アクアの顔を見るとすぐに答えを教えてくれるため、じーっと彼女を見つめた。


「はいはい……。それでは、食べてもらう人を思い浮かべながら、ハートの形を作ってください」

「わかったー。じゃあ、フォルスト様を思い浮かべながら作ってみるね」


 いったん目を瞑り、フォルスト様が美味しそうに食べている顔を思い浮かべてみた。


「うっ……。胸がいたくなってきた」

「はぁ、見せつけてくれますねぇ……」

「病気になっちゃったかもしれない。でも、王宮ちょくじょくしゅじーの診察は受けたくないよぉ……」


 私は王宮直属主治医から散々な目に何度も遭ってきた。

 もちろん相手に悪意などはないことくらいわかっているのだが、どうしてもあのお方だけは苦手である。


「今回は王宮直属主治医の診察を受ける必要などまったくもって問題ありません。むしろそのいたみは微笑ましいものですから。さて、明確に陛下のイメージが浮かんだと思いますので、そのままハートの形を作りましょう」

「う、うん」


 胸が苦しくなりながらも、なんとかハートの形で整えた物体をいくつか作った。


「初めてなのにさすがですね。綺麗なハートでとても良い感じです」

「へっへーん。どろんこ遊びを毎日させてくれたおかげだよ」

「せっかくですから、他にもなにか面白そうな形を作られてみては?」

「うん、やってみるー」


 どろんこ遊びはできなかったけれど、クッキー作りで楽しめた。


「素晴らしいですね。それではこれを焼くわけですが、残りは料理人に任せましょう」

「もう終わり?」

「そうですね。ここからは失敗してしまうリスクも高いですし、フラフレ様の性格上火傷などをされる可能性が非常に高いかと。できる範囲でやれれば良いのです」

「うん。わかった。今日は付き合ってくれてありがとうね」

「いえ、本番はこれからです」

「へ?」


 アクアがまたしてもなにかを企んでいそうな顔をしていた。


「出来上がったら、陛下にプレゼントしてあげてくださいね」

「食べてくれるかなぁ……。いつも出てくるクッキーは料理人さんが作っているんでしょ?」

「フラフレ様の手作りが加わっているため、食べないわけがありません」


 クッキーが完成するまでにはもう少し時間がかかるらしい。

 食べてくれたら嬉しいなぁと思いながら、部屋に戻った。


 ♢


「ほう、今日はフラフレが形を整えてくれたクッキーか」

「はい。焼いてくれたのは料理人さんですけれども」

「食べて良いのか?」

「ぜひー!」


 フォルスト様が椅子に座り、私もフォルスト様の正面側にある椅子に座った。


「では、いただこう」


 フォルスト様は、ハート型のクッキーを手に取って口に入れた。

 食べながら顔を赤らめている。とても幸せそうな顔をしながら。


「うまい……。こんなにうまいクッキーを食べられる日がくるとは。私は幸せ者だ……」


 また私の心臓の大暴れがはじまった。


「ううっ」

「どうしたのだフラフレよ」

「陛下。フラフレ様は問題ございませんので引き続きクッキーをお楽しみください」

「しかし!」


 フォルスト様が椅子から勢いよく立ち上がり、私のそばに近づいてきた。

 さらに心臓の暴走が続く。


「フラフレよ、王宮直属――」

「大丈夫……だと思います! アクアが問題ないと言ってくれていますし」


 その名前を出された瞬間、拒否反応ですぐに身体だけは元気だということをアピールした。

 ここへ来たばかりにされた、プスっとされた痛いおもいは、もう本当にこりごりなのだ。


「あまりにも心配だ。せめて、隣にいよう」

「ひぃ……!」


 私の心臓よ、もう少し大人しくしてくれ。

 フォルスト様が近くにくると、ドキドキがおさまらない。


「フラフレがこんな状態でも食べて良いのか?」

「陛下。問題ありません。どうぞ出来立てを召し上がってください。フラフレ様のためにも」

「うむ……。ところで、フラフレは食べないのかい?」

「良いのですか?」

「もちろんだ。食べたまえ」


 フォルスト様が手に取ったクッキーを、私の口元に近づけてきた。


「体調が悪いのだろう? 身体を無理に動かすことはない。さぁ、口を開けたまえ」

「はい……。あーん」


 フォルスト様に食べさせていただいたクッキーは、いつも食べていたクッキーよりも美味しいなと思った。

 アクアが私たちのやりとりを見ながら、クスクスと笑っていた。


「私は大丈夫ですよ。お返しです。はい、どうぞ」

「う……は、恥ずかしい……」

「大丈夫ですからぁ。はい、あーんしてください」

「う……うむ」


 フォルスト様の口の中へクッキーを入れた。

 顔を真っ赤にしながら食べているフォルスト陛下。


 おいしそうに食べてくれていて、私はこの日、大満足だった。

バレンタインデー外伝は、これで終了です。

書籍版では3種類の外伝を入れていたので、WEB版でも外伝を書いてみたくなって載せてみました。

本編とはあまり関係のないエピソードでしたが、フラフレとフォルストのあまあまな関係が書けて満足です。

次回更新より本編再開です。(次回はSide視点になります)

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追放聖女のどろんこ農園生活 ~いつのまにか隣国を救ってしまいました~
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