72話 フラフレは川の工作がしたい
「王都に川が流れるようにしたい……だと?」
「はい。そうすれば無理に雨を降らせなくても、川の水で水不足にはならないのでしょう?」
「まぁ、上流は雨しか降っていないから干上がることはないだろうからな」
朝食を食べ終えてから、その場でフォルスト様に確認をしてみた。
王都に川が流れるようにすることを反対するような返答ではなかった。
つまり、これなら計画が実行できる。
この時はそう確信していた。
「なにを考えてくれているのだ?」
「アクアから教えてもらったんですけど、昔の王都は川が流れていたんですよね? 元どおりの川になるように工事してもらおうかと思いまして」
「な!?」
あれ、フォルスト様が驚いた顔をしている。
聞きかたがまずかったのだろうか。
横で起立の姿勢で立っているアクアも呆れてような表情を浮かべていた。
「もちろん私に工作はできません。そこで、今まで貯めていた金貨で工作できる人たちを募集して王都に川が流れるようにしてもらいたいなぁと」
「工作……。フラフレよ、気持ちは嬉しいのだが……」
「え!? もしかして、川では金貨が作れない……じゃなくて、金貨で川を作れないのですか?」
「フラフレ様。どちらも言い方間違えています。一旦落ち着きましょう」
せっかく思いついた作戦がパァかと思ったら、少しばかり焦ってしまった。
大きく深呼吸をしてもう一度改めて……。
今の私にできる、精一杯の伝わりやすそうな説明を考えた。
「金貨を渡して、工作してくれる人たちを募集できないのですか?」
「不可能ではない。だが、それには大量の費用がかかる。国としてもその案は元々あったのだが、今年の出費は、ほとんどハーベスト王国から食料を仕入れるために使ってしまった。ゆえに工事に充てる費用がないのだよ」
「国でも金貨が足りない……」
もしかしたら、部屋に飾っている金貨では足りないのかもしれない。
全部使い切ったとしても、せめて少しだけでも川が王都に流れるようにすることはできないのだろうか……。
「完璧にしようとしたら、金貨って何枚くらい必要なんですか?」
「見積もりを作らねばはっきりとは言えぬが……、金貨一万枚は必要だと思う」
「いちまんっ!?」
私の部屋には金貨が二千枚くらい溜まっている。
王都中の農園で野菜を作って、毎日王宮の農園で土と遊んでいたら、いつの間にか集まっていた。
いつかフォルスト様が金貨を使いたい日が来たら、渡そうと考えていたが、これでは金貨が全く足りないではないか。
「国で使える予算が、あと概ね五千枚しかないのだよ。これでは工事が中途半端になってしまう可能性が高くてな。だがフラフレよ、国のために考えてくれてありがとう」
「実現させたかった……」
「そもそも、フラフレが稼いだ金貨だ。自分のために使ってくれて構わないのだよ」
「もちろん自分のためですよ。フォルスト様が喜ぶ顔を見るためなので」
フォルスト様が顔を赤くしながら頬を掻いて、私から目を逸らす。
このお顔も可愛らしくカッコいいから、こうなったらなんとしてでも実現させたいなぁ。
しかし、すぐには金貨を集めることは難しい。
「あぁ……、せめて手伝ってくれる人たちに、野菜を恩返しで提供するとかだったらなぁ……」
私は、なんとなく思った一言、ただそれだけのことだった。
「それだ!!」
「はい?」
「フラフレよ、今の発言のおかげで川を王都に流す工事、そして井戸の建設両方とも叶えられるかもしれぬ! とはいえ、毎度のこと、フラフレに協力していただく形にはなってしまうが……」
「私はいつでもフォルスト様のお願いなら何でも聞きますよ」
「本当にすまないと思っている。国を良くしたいと思うと、どうしても気持ちが先走ってしまって……」
「役に立てることがあるなら、私はなんでもしますから。いっぱいお礼したいですし」
「フラフレよ……」
フォルスト様が私に寄ってきて、ギュッとしてくれた。
ギュってされると幸せすぎてとろけてしまいそう。
ところでフォルスト様は、なにを閃いたのだろうか。
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