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【書籍化】追放聖女のどろんこ農園生活 〜いつのまにか隣国を救ってしまいました〜  作者: よどら文鳥


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69話【Side】ジャルパルは強化された牢獄のせいで脱獄ができない

 ハーベスト王国にて。


「おのれ、フラフレめ。よりにもよって私の性癖を暴露しおって……」


 今までハーベスト王国を守っていたフラフレが、正真正銘の聖女であったのだと、ついに国民に知れ渡った。

 リバーサイド王国に同行していた兵士たちが真実を知り、フォルストの条件をしっかりと守ったからである。


 おまけに、全てはジャルパルに策略によって、全国民を騙していたことがようやく理解された。

 国王の座を引き摺り下ろされ、ジャルパル元国王は、かつてフラフレを閉じ込めていた地下牢生活を送っている。


 しかし、兵士たちの発言だけでここまでの結果を出すことはできなかった。

 ジャルパルを意図的に牢獄生活へ仕向けた者がいたのである。


「バルメルよ、私を裏切るか」

「聖女を偽物だと騙していた行為は、信頼問題に大きく関わるものです。そのうえ、兄上の不埒な行為がバレてはどうすることもできませぬ。今は」


 ジャルパルは、フッと笑みを浮かべた。

 バルメルの企みを理解できたからである。

 まだ全てが終わったわけではないと確信したからだ。


「どうせお前のことだ。前々から国王の座につき国を支配しようと考えていたのだろう?」

「おっと……そのような人聞きの悪い言葉は聞きたくありませんな。現状、兄上の蒔いた種を浄化し、民の信頼を元どおりにしようと尽くしていますので」


 バルメルは牢の中に入っているジャルパルを哀れな目で見ながら、満足していた。


 フラフレが真の聖女だったことを知ったときは、バルメルも驚きを隠せなかった。

 だが、今となってはいなくなった聖女のことなどどうでもよく、むしろそれも好都合だと思っていたのである。


「これからは残った聖女たちで頑張って国の気候を変えてもらうのでね。兄上はもうしばらく大人しく地下牢生活をしてもらいたいのですよ」

「ふざけるでない。しかも、くそう。そういえば私が命令をしたのだった……。どうしてこんな頑丈な作りに変えるよう指示してしまったのか……」


 フラフレが幽閉されたところにジャルパルが入っている。

 かつては土とわずかな水が流れるような牢屋で、その気になれば脱獄も可能だということをジャルパルは知っていた。

 だが、フラフレが土になにか良からぬことをしたと勘違いし、土ごと撤去、廃棄処分。

 同時にジャルパルの指示で牢獄の大幅改装もしてしまった。

 そのため、それなりの道具でもない限り、脱獄は不可能である。


 ジャルパルは自分で指示したことを後悔していた。


「バルメルよ、私をいつここから出すつもりだ?」

「ころ合いを見計らってです。兄上には協力してもらわなければならないのでね」

「ふざけるでない。私を国王の座から引きずりおろしておいて、なにを今さら」

「フラフレが憎いのでは?」

「それはそうだが……。それに……」

「また不埒なことをお考えで?」

「バルメルは見ていないからそんなことが言えるのだ。見違えたフラフレの姿は……くそう。私はなぜあれほどの女を廃棄処分にさせてしまったのか」

「経費削減と言っていたでしょう」

「く……」


 ジャルパルは返す言葉もなかった。

 フラフレの真の姿を見て、後悔しかなかったのだから。


 フラフレの見違えた顔は、ジャルパルにとって天使のように見え、もう一度連れ帰りなんとしてでも自分のものにしたい。

 そのことだけを考えていたのである。

 たとえ牢獄に入っていようとも、すぐに諦めるようなジャルパルではなかったのだ。

 すでにジャルパルの頭の中には、綺麗になったフラフレでいっぱいなのである。


「バルメルよ、私を利用したいのならば条件がある」

「ほう、私の策略の邪魔にならない範囲でなら聞きますが」


「問題ない。リバーサイド王国の国王を潰す。あの男がいる以上、ハーベスト王国にとっても邪魔だ。むしろ、リバーサイド王国ごと我が国の物にしたいと考えている」

「さすがに無理難題でしょう。それに私は他国に興味はありませんので。ハーベスト王国だけで支配できればそれで良いのです」

「ならば、次おまえがここに来るまでに策略を考えておく。それで納得がいくようならば力を貸せ」


 バルメルはジャルパルが考えると言ったことで耳を傾けた。

 ジャルパルの戦略は今回は失敗してしまったものの、今まで一歩うえの判断を出すようなものばかりだった。

 バルメルにとっても有益なことかもしれないと思い、納得した。


「時間は今まで以上にありますからね。兄上の策略を次回聞くことにしましょう」

「あぁ。ところで、私に食事はあるのだろう?」

「フラフレのときは踏み潰されたパンと腐りかけの肉と魚の骨でしたっけ?」

「バカを言うでない。あの女は聖なる力があったからこそそれでも生き延びれたのだ。私は同じようにはいかぬ」

「やれやれ……。まぁ食事に関してはなんとかなるでしょう。まだ詳しい処罰などは引き伸ばしている段階なのでね」

「あぁ。頼りにしている」


 ハーベスト王国で、新たな動きが再び始まろうとしていた。

どろんこ聖女の発売まで残り3日となりました。

しばらくの間は週一ではなく、更新頻度をあげようかと思っています。


なお、前話の後書きで載せた、

『「時間がかかりすぎ」だと使用人をクビにされましたが〜以下略』

の連載版はじめました。


こちらもよろしくお願いいたします。

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追放聖女のどろんこ農園生活 ~いつのまにか隣国を救ってしまいました~
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