フラフレは金貨をふたたび並べる
翌日、盗られた金貨は私のもとへ返ってきた。
さぁ、全部元の位置に並べなければ……。
千枚以上あるから大変だ。
私は所定の位置に並べ、向きも正確に整えていく。だがこれは骨の折れる作業だ……。
「アクア……手伝ってほしいんだけど」
「いやです!」
即答で断られちゃった。
今までどんなお願いも聞いてくれていたのに、なんでだろう。
「フラフレ様は懲りていないのですか?」
「でも悪い人も捕まったことだし、平和になったんだよ」
「それでもいやです! こればかりは最後のジャルパル陛下の意見に賛同ですね」
「えぇ〜そんなぁ……」
渋々一人で頑張って並べていく。
さすがに疲れてきたけど、これだけは譲れない大事なことなのだ。
私が疲弊してきたころ、フォルスト様がやってきた。
「また並べているのか?」
「はい。部屋の装飾にはこれがどうしても必要なんです」
「そうか。ところでアクアは銅像のように立っているだけなのか?」
「この行為には賛同しかねます」
「では私が手伝うか」
フォルスト様が、山積みの金貨を手にして、綺麗に並べてくれた。
「陛下、正気ですか?」
「まぁそう言うでない。今回この装飾によってフラフレが助かったようなものだろう……」
「あんなこと二度とないと思いますけどね」
「そうであって欲しいものだ……」
「しょうがないですね……」
アクアも一枚の金貨を手にとって並べてくれた。
「手伝ってくれるの?」
「この調子では朝になってしまいますから。それに、金貨の配置はフラフレ様の次に私がよく覚えています」
二人が加わってくれたことにより、やる気がみなぎった。
もうひと踏ん張り、頑張ろう。
♢
金貨の配置がひととおり終わって、部屋も元どおり。
私は二人にお礼を言った。二人の協力がなかったら、本当に徹夜になってしまっただろう。
さて、余った時間で農園へ行こうかなと思っている。でも、もう暗くなってきちゃったしどうしようかなぁ。
「アクアよ、少しだけ席を外してくれないか? フラフレと二人で話がしたい」
「承知しました。このあと夕食が待っていますので、決して良からぬ方向には進まないように」
「からかうでないっ!」
「ふふ、ではごゆっくり」
アクアは笑いながら部屋から出ていった。
「フラフレよ、今回の事件で迷惑をかけたうえに危険な目にまで遭わせてしまった。すまない」
「そんなことありませんよ。フォルスト様が無事で良かったです」
「実のところ、何度かジャルパル殿に殴りかかりたくなっていた。だが、横にフラフレがいたから気持ちを抑えることができたのだよ」
私もアクアやフォルスト様がそばにいてくれたから、あの状況下でも安心していられてのかもしれない。二人には感謝しても足りないほどだ。だが、これだけは言っておきたかった。
「国同士の喧嘩はしちゃだめですよ?」
「あぁ、そのつもりだ。だが、やはりフラフレのこととなると感情をセーブすることが難しい……。これからも私のそばから離れるでない」
「もちろんです。えぇと……、離れないということは、お風呂の身体洗いっことかもできるってことですか?」
「それはダメだ! 健全な付き合いをだな……」
「お風呂は健全で楽しいかと思うんですけど……」
「じきにその辺もアクアから教育させねばな。こういうことだ」
「どんな……って、へぇぇぇえええ?」
私の身体をフォルスト様の両手で優しく包み込まれ、そのままぎゅっと抱きしめてくれた。
「フラフレよ、もう一度言おう。私から離れるでない。そして、今回の件はそばにいてくれて助けられた。ありがとう」
「は、はいっ!」
絶対に離れるものか。
いつか絶対に会いたいと思っていた幼馴染こそがフォルスト様だと知った。
もう二度と離れ離れになんてなりたくない。
私もその想いでギュッとフォルスト様の引き締まった身体に抱きついた。
次回、ジャルパルが大変なところから始まります。
いよいよ来週10日、本作が書店に並びます。
面白エピソード外伝てんこ盛りになっています。
次回の更新は、2/9、2/10、2/11と発売記念として連続更新になります。
楽しみにしていただけたら嬉しいです。
最後に、新作のお知らせも失礼します。(前話からの更新期間中に、3作新作載せちゃいました笑)
『「時間がかかりすぎ」だと使用人をクビにされましたが、クビにした伯爵家は崩壊がはじまりました〜公爵家の使用人任務では丁寧だと褒められます〜』
他2作も新作はありますが、3作のうちでこれが一番楽しく書けたなぁと思う作品です。
良ければ是非ご覧ください。





