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【書籍化】追放聖女のどろんこ農園生活 〜いつのまにか隣国を救ってしまいました〜  作者: よどら文鳥


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【ハーベスト王国視点】ジャルパル、リバーサイド王国で……

「以前訪問したときとはまるで別の国のようだな……」


 リバーサイド王国王都へ到着した。

 以前ジャルパルが訪問したときは、雨ばかり降り続き、農園は沢山あれどどこも作物は育たずただの泥池。

 民も活気がなくただ生きることだけで精一杯、という印象を残していた。

 だからこそ、その弱みに漬け込み食料や物資を高値で売ることが容易だったのだ。

 だがそのような面影はどこにもなく、少し前のハーベスト王国を思い出させるような雰囲気だった。


(元々は私の国で育てた聖女だぞ……。勝手に隣国で利用するなど許せぬ。すぐに奪い返してみせよう)


 ジャルパルは拳を強く握り、怒りと悔しさが顔に出ていた。

 だが、その前にジャルパルはやるべきことがあったのだ。

 まずはジャルパル個人の目的を行うため、適当な農園へ向かった。


「お待たせしました陛下。今日採れたばかりだという野菜を買ってきました」

「うむ」


 ジャルパルは身につけている鉄の指輪を野菜にあてる。

 毒が入っているかだけは警戒したものの、毒味役を通さず自ら口にした。


「やはりな! やはりこれだ!」

(この味が以前王宮の農園で食べていたものに間違いはない)


 ジャルパルは、自らが食べた野菜にフラフレの力が関わっていると確信した。

 ひとまず、諜報員たちに野菜を食べさせた。

 ジャルパルにはフラフレの力が宿る野菜にどのような効果があるかを知っているため、このあとの作戦に役立つと思っているからである。


「食べたまえ」

「え、いいんすか?」

「そうだ。これから諸君らには頑張ってもらわねばならぬからな」

「じゃ、遠慮なく」


 諜報員たちはバクバクと遠慮なく野菜を食べた。

 そして残った野菜の芯は道端に投げ捨てる。


「信じられないほど美味かったっす!」

「なんか、妙に力が湧き出てくるような気もする……」

「国王様に雇われて、国外旅行までできて感謝っす」


 口々に評価した。

 元気になった状態であれば、彼らの作業効率もひと一倍発揮できる。

 ジャルパルは、フラフレの力が宿っている野菜を利用して戦力増加を企んでいたのだ。

 経費を最小限にして、如何に効率よくフラフレを連れ帰るためにはどうすればいいか念入りに考えた策である。


(これでフラフレを見つけ次第、容易に連れ去ることができるだろう。フラフレの顔も唯一知っているコイツらに任務を伝え、その間に私は野菜を大量に仕入れておかねばな……)


 フラフレを連れ去るための諜報員と、野菜を買い占める班に分かれた。

 ジャルパル自らが農園の野菜全てを買い取ろうと交渉しにいったのだが……。


「なぜだ? 金は出すと言っているのに販売はしないだと?」

「申し訳ないけどねぇ、大量販売はお断りですじゃ」


 ジャルパルの交渉相手はミラーシャだった。

 ミラーシャはジャルパルの格好や周りにいる護衛たちを見て、他国の人間の可能性が高いと判断した。

 そして、ミラーシャは警告したのだ。


「ここで育った野菜はみんなのもの。一人で全てを買い占めるような行為は禁止となっているのよ。それから、失礼ながら一応聞くけど、アンタら王都の人間ではないね?」

「うむ。ハーベスト王国の者だ!」


 ジャルパルはこの後の計画を優先していたため、自らが国王であることは伏せていた。


「そうかい。最近決まった法律を教えておこうかの。王都を出る際、王都で手に入れた野菜類に関しては課税が入るのじゃよ」

「なっ……。いつのまにそのような決まりを? ハーベスト王国の法律を真似たのか?」

「そんなこと私はいちいち知らないよ。文句があるなら王宮へ行きな」


 ジャルパルはこれ以上文句を言っても無意味だと判断し、一旦引き下がる。


「ここの国王に先手を打たれたか……」

「如何いたしますか?」

「まぁこの程度は想定の範囲内、焦ることもあるまい。一旦は別の任務を与えた諜報員たちも合流させてから交渉しに行くことにしよう。この人数ではあまりにも少なすぎて、むしろ警戒されてしまうかもしれないからな」


 しばらく待機していると、フラフレを奪還する予定だった諜報員たちが戻ってきた。


「任務はむりっす」

「どういうことだ? フ……、じゃなくて目的の人間はいたのか?」

「発見はしたんすけどね、想像を絶する警戒網で……。あれはまるで王族を守るような配置の仕方ですよ」

「なるほど、すでに国の手の内というわけか。今一度作戦を考える必要があるな」


 ジャルパルにとって誤算だった。


 今後、国同士の衝突になったとしても、国の総力をあげればフラフレを連れ帰ることも不可能ではなかったのだ。

 むしろ、今のジャルパルにとってはそれくらいのことをしなければならない責任が重くのしかかっている。


 だが、戦略をすぐに思いつくジャルパルにとって、造作もないことだった。


「それでは翌朝、王宮へ交渉しに行く。諜報員たちよ、君らには特別任務を与える。成功すれば報酬はさらに上乗せだ」


 ここでフラフレを連れ帰れなければ、ジャルパルには明日がない。

 なんとしてでも連れ去る必要があった。

 同時に野菜の交渉もできるため、ジャルパルにとっては一石二鳥でしかないと思い込んでいた。

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追放聖女のどろんこ農園生活 ~いつのまにか隣国を救ってしまいました~
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