【ハーベスト王国サイド】ジャルパルに余裕がなくなる
ハーベスト王国にて。
雨ばかりが降り続き、ついに民衆の怒りが爆発した。
民衆は、太陽を照らす役割がある聖女たちに対し、高額の給金を税で支払っていることは知っていた。
だが、ここ最近の雨続きで食料不足も深刻になっている。
ジャルパルのことを『無力陛下』『聖女に甘い』『国を崩壊させる気か』などと不満が続出している状況だ。
ようやく事態を深刻に受けとめたジャルパルは、バルメルを呼び出した。
「ミーリは他国へ旅行と聞いたが、これは一体どういうことだ? 今は聖女の力が特に必要な時期なのだぞ」
「変な事件に巻き込まれていないだろうな……」
ミーリの帰国が予定より何日も遅れている。
その結果ジャルパルにもミーリが不在だということがバレてしまった。
だが、バルメルにとってそんなことよりもミーリの安否を心配していた。
「なぜ勝手に不在にさせたのだ?」
「そ、そろそろ帰ってくるかとは思います。しかし、お言葉ですが兄上。他にも聖女がいるでしょう? どうしてミーリ一人に責任を負わせようと?」
「ミーリには聖女代表としての責任がある。監督責任としてしっかりと聖女としての任務を引き継いでから出かけるべきであったな」
「今まで代表だったフラフレに対してはなにもしてこなかったではありませんか。いきなりミーリが聖女代表だからと責任を負わせるのはいかがなものかと」
バルメルは必死にミーリを正当化させようと庇っていた。
しかし、すでに余裕のなくなったジャルパルは、ミーリたちを庇うような猶予も残されていなかったのだ。
「こんなときに限って一番聖なる力を持っているミーリを不在にさせるからいけない。そのせいで雨ばかりが降り続き、国民の怒りも限界だ。矛先は当然国王の私にくる。せっかく築き上げてきた私の信頼がパァではないか。バルメルはいったいなにを考えて勝手に旅行などさせたのだ?」
一方、バルメルはそれ以上のことはなにも言えなかった。
(公爵家だけで手柄を取るための計画が兄上にバレるのはまずい。それにミーリはしっかりした子だ。任務の引き継ぎなしで出ていくような愚か者ではないはず。どうしてこんなときに限って他の聖女はサボっているのだ……。なにか弁明せねば)
「兄上よ、ミーリ含めて聖女は三人です。もしもミーリがいなくなってしまった場合どうするお考えですか?」
「なぜ不吉なことを言っている?」
「たとえ話です。ミーリが国にとっていかに大事な存在か今一度考えて欲しいなと」
「姪っ子だし、一番活躍してもらいたいとは思っている。だが、この状況ではまずは聖女たち全員で協力し、太陽を照らしてもらわねば私の立場が危うい」
バルメルはこのとき、内心で苛立ちしかなかった。
このままではミーリの評価がなにをしても変わることがない。
なんとしてでもリバーサイド王国でミーリが功績を残し、いかにミーリが重要な聖女であるかを知らしめる必要があった。場合によってはバルメル自身が国王の座につくことも考えるようになったのだった。
一方、ジャルパルはそれぞれの聖女が本来の力を発揮できていないのは、フラフレが置き土産になんらかの力で阻害している可能性があるのではないかとも考えはじめていた。
あくまでも聖女たちの本来の力さえ出せれば国はどうとでもなると、このときまでは思っていたのだ。
二人の不穏な空気が流れる中、近衛兵が入ってきて状況が変わる。
「陛下……、少々よろしいでしょうか?」
「どうしたのだ? もしや……」
「はい……。そういうことです」
「バルメルよ。ひとまずこの話は後だ。私は急用がある」
「なにごとですか?」
「お前が知る必要はない」
「立場上、私は宰相なのですが……」
「関係ない。では失礼する」
ジャルパルは急ぎ近衛兵と一緒に検問所へと向かった。
ミーリに説教をするために、あらかじめ王都へ戻ってきた際にジャルパルへ報告するよう命じていたのだ。
「兄上め……、私を呼び出しているにもかかわらず用件すら言わずに勝手に出ていくとは……。これ以上私をコケにするならば容赦はせずに国王の座も引きずり下ろすぞ……」
なにも知らずに残されたバルメルはジャルパルに対して激しい怒りを覚えていた。
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