フォルストは想いを打ち明ける
「はい?」
いきなりなにを言い出すのだフォルスト陛下は!
「けけけけっ、けっこん!」
「あぁ……。私の結婚相手はフラフレしかいない!」
「あわわわ……。なぜ突然?」
「おめでとうございますっ!」
アクアが再び戻ってきた。このタイミングで……。ひょっとして、退室したフリしてドア越しでずっと聞いていたんじゃないだろうか。
フォルスト陛下が真剣な表情をしながらじーっと私を見てくる。
たまに冗談を言ったりしてくることもあるけれど、今回は冗談ではなさそうだ。
「ずっと妹を探していた。だが、孤児院が廃墟になったあの日、キミは連れ去られてしまっていた。あのころから可愛かったからどこかの商人に売られてしまったか、もしくは当時の陛下のおもちゃにされ殺されてしまったかと思い込んでいたよ……」
「可愛いだなんて……」
「もうハーベスト王国では生きてはいまい。そう思っていたが、皮肉にもあの国の援助なしではこの国は助からない状況でもあった。仕方なく言いなりにはなっていたが、同時に妹が生きている望みをかけて、微かな希望を頼りに調査を続けていた。だが、全く情報が入ってこない。さすがにダメかと思って最後の賭けとして私自らハーベスト王国に足を運んで調査をしていた。そのときだよ、フラフレが倒れているのを見つけたのは……」
フォルスト陛下が私を探しに来てくれていたことすら初耳である。
今までお互いの話をしてこなかった。
私が話を切り出せなかったように、フォルスト陛下もなにかが理由で言えなかったのかもしれない。
「私の直感で、この子を絶対に助けて生涯を共にしたほうがいいとまで思っていた。だが、長い間ずっと愛していた妹の生死を確認できていない状態でキミと愛を育むことはできない。だが、どうやら私の直感は間違いではなかったようだ。同一人物だったのだからな……」
「えぇと……、とても嬉しい話だと思うのですが、フォルスト陛下は国王という立場なのに良いのですか?」
私はあくまで一般人であって貴族でも王族でもない。
フォルスト陛下のことは大好きだけど、結婚する相手としてはハードルが高すぎると思う。
「地位的な問題だけ考えたら本来ならば厳しいだろう。だが、このときのためにずっと改革をしてきたのだ。全ては妹……つまりキミを探すためだ。そして堂々と一緒にいれるよう、行動してきた」
「私を……ですか?」
コクリとフォルスト陛下が頷いた。
今度はアクアが捕捉するように教えてくれる。
「陛下はどうにかして探しびとの手がかりを掴みたいと言ってましたからね。そのために少しでも高い地位につけば情報も入りやすいと。そうしているうちにいつの間にか陛下にまでなったのです」
「そういうことだ。フラフレのおかげだよ」
「陛下の直感はほぼ的中します。このことが前国王陛下にも高く評価され、常にリバーサイド王国を救ってきたのです。すでに国民の信頼も得ています。それに、フラフレ様はすでに国を救っていますからね。今後タイミングを見計って聖女としての貢献を公表すれば、誰も否定するような者はいないと思いますよ」
「へ? 私、国を救った覚えはないよ……?」
そう言うと、フォルスト陛下とアクアはクスクスと笑いだした。
「毎日農作業をして王宮だけでなく王都にある農園を救っているだろう? それに晴天続きは明らかにフラフレの力だ」
「農作業は趣味で……」
「趣味であろうと食料難は解決してきている。それに雨が降らなくなったのは明らかにフラフレのおかげだ。無意識なのかもしれないが、フラフレは国を救ってくれているのだよ」
そんなに大規模なことをしていたのか……。
私はあくまでフォルスト陛下が喜んでくれたり、私が土と戯れたり、その程度でしか考えていなかった。
「客観的に見ても、フラフレ様の功績を考えたら陛下との交際も申し分ないかと思いますよ。私個人の意見としましては、世間云々よりもお互いの気持ちが大事だとは思いますけれどね」
「私の気持ちだけだったらフォルスト陛下とずっと一緒にいたいなぁ」
私は、ただ思ったことを口にしただけだった。
だが、フォルスト陛下にとってはものすごく重みの言葉だったのかもしれない。
「フラフレよ……、ありがとう!」
アクアが静かに部屋から出ていった。
このあともしばらくの間、ギュッと抱きしめられたまま時間だけが過ぎていく。
今日、私とフォルスト陛下の交際が始まった。





