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【書籍化】追放聖女のどろんこ農園生活 〜いつのまにか隣国を救ってしまいました〜  作者: よどら文鳥


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フラフレは違和感しかなかった

「ん? んんんんん〜?」


 今日はそれなりに楽しく、王宮の農園で遊んでいる。


 だが、どういうわけか今日はアクアも一緒にどろんこまみれになっているのだ。

 今まで絶対に土に立ち入ることのなかったアクアがだ。普段のメイド服すら汚れてしまっている。

 アクアは、私のそばにしがみつくような状況が続いていた。


 なにかがおかしい!


「どうされましたか。まるで私のことを変態扱いするような目をしていますが……」

「変態とは思っていないよ。いつもよりやたらと近くにいるなぁって」


 それだけではない。

 私の周りには十人規模の見学者がいるのだ。

 私が聖女だということは黙ってるって言っていたような気がしたんだけど……。


「お気になさらず。私もどろんこまみれを経験してみようかと思ったまでです」

「なーにか隠してない?」

「いえ、全く」

「あの見学者たちはなぁに?」

「あぁ……。遠足ですね」

「王宮に遠足? みんな見た目が強そうな人たちなんだけど……」


 しかも、かなり物騒な武器のようなものまで持っている。

 私たちが狙われているのではないだろうか。

 私が彼らに対しておもいっきり警戒しているため、いつものように自由気ままに楽しむことができないのだ。


「彼らは私の部下でもありますから、気にしなくても大丈夫ですよ」

「え?」

「しばらく彼らの見学が続くかもしれません。ですが、これでフラフレ様に万が一のことがあった場合、彼らがいるので安心できますね」

「そんなに物騒な国じゃないと思うんだけど……」


 リバーサイド王国はとても平和な国だと思う。

 今までたくさんの農園へ遊びにいって、野菜を育てる手伝いという名目で土と戯れてきた。

 そこで出会った人たちは、良い人ばかりだった。

 今のところ危険な出来事など全くない。


 もしもだけど、遠足の人たちが護衛関連だとしたら、とんでもない事態になっているのではないかと思ってしまっただろう。

 なぜならば、フォルスト陛下に配属されている護衛よりも人数が多いからだ。

 アクアの言ったとおり、ただの遠足と考えておこう。

 私は見た目が強そうな人たちに手を振った。


 だが、どういうわけか彼らは会釈をしてくるだけだった。

 まるで社交辞令のように。


「ん〜、遠足なのにお弁当持ってきていないのかなぁ」

「あまりお気になさらず……」

「でもせっかくの遠足なら美味しいごはんあったほうが良いよね?」


 実ったばかりの野菜をよいしょと持ち上げて、それを持っていく。

 だが、なかなか受け取ろうとしてくれない。

 しかも、遠足の人たちは困った顔をしながらアクアに助けを求めているようだった。


「あぁ……、フラフレ様申し訳ありません。彼らはフラフレ様の護衛です」

「えっ? えええええぇぇっ! こんなに大勢でなにかあったの? どうして急に……?」

「あくまで用心としてです。陛下は勘が鋭いところがありまして、フラフレ様のことが心配のようです」

「勘が鋭いんだぁ……。すごいんだね!」

「さすがに百発百中とまではいきませんが、陛下の判断はほぼ信頼して良いくらいだと思っています」


 私が孤児院にいた幼少期、勘の鋭い幼馴染がいた。

 孤児院が廃墟になったとき、彼は国外へ廃棄させられてしまったが、きっとどこかで生きているのだと信じたい。

 そういえば、陛下ってあのときの幼馴染と少しだけ似ているんだよなぁ。

 あのときの幼馴染と同じような勘の鋭さだとしたら、今回の護衛に関しては概ね察しがついた。


「つまり、私が危険ってことなの?」

「……それはお答えできません」


 いくら鈍感な私でも、今回ばかりは状況を理解できる。

 アクアが私のそばについていたことも守ろうとしてくれたからなのだろう。


「アクア、ありがとうね」

「なぜそのような返答になるのでしょう……?」

「守ってくれているからだよ」


 私はアクアにお礼の意味も込めてギュッと抱きしめた。


「ちょ……フラフレ様?」

「いつもありがとう。でもね、いくら危険って言ってもそこまでのドジはしない自信があるよ?」

「はい……?」


 アクアが不思議そうな顔をしながら私を見てくる。

 アクアがこういう目をするときは、大抵私がトンチンカンな答えを出すときだ。

 だが、今回は真っ当な発言だから大丈夫だろう。


 絶対に!


「陛下もアクアも、聖なる力の使いすぎで倒れちゃうことを心配してくれているのでしょう?」

「はい?」


「今日もいつもどおりにしているし、私はマイペースにしか動けないから大丈夫だよ?」

「あぁ……。なにもわかってない。これは陛下に要相談ですね」

「うん、もしも倒れそうなくらい身体が危険だと思ったらちゃんと休むから。私からもそう伝えるよ」

「いえ、そういうことではありません……」


 それにしても私の健康管理まで気にかけてくれるなんて、フォルスト陛下もアクアも優しすぎだよ。

 今日の農作業が終わって風呂に入ったあと、私はフォルスト陛下のいるところへ連れていかれた。

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追放聖女のどろんこ農園生活 ~いつのまにか隣国を救ってしまいました~
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