【フォルスト視点6】フォルストはアクアに助けを求めた
「待て、アクア!! 誤解だ!」
「言い訳無用! 陛下ともあろうお方がなにをやっていたのですかぁぁっ!!」
アクアが目から火を放つかのような勢いで私を睨みつけてきた。
フラフレがいつ目を覚ますかわからない。
このまま放置していては身体が冷えて風邪を引いてしまう。
そこで、御者に頼んでアクアをここ温浴施設へ呼ぶよう伝えた。
そしてアクアが来て、脱衣所へ行った途端に私は大目玉を食らった。
当然といえば当然か。
フラフレの要望どおりにしていたら、いつの間にか一緒にお風呂に入ることになった。
しかも、全裸を見てしまったのだし、弁明のしようがない。
「フラフレ様は最後に仮眠してしまってタオルをかけるとこまでは良しとしましょう。そのあと、フラフレ様の寝相の悪さに怯えて外へ逃げるなんてなにごとですか!?」
「怒ってるのは、そこなのか!?」
「当たり前でしょう!! 何度でもタオルをかぶせてあげれば良いではありませんか! 身体に触れても起こせば良いではありませんか」
「いや……しかし格好が……それにフラフレは純粋なのだよ。私が触れるわけには……」
「はぁ……ヘタレ陛下ですね。そんなことで怒ったり抵抗するような感情があったら、一緒にお風呂など入るとは思えませんけれどね!」
もちろんそんなことはわかっている。
だが、これは個人的な問題もあったのだ。
こんなことでフラフレにドキドキしてしまうのは最低だと思った。
彼女の笑顔や無邪気さでドキドキしたい。
そんなことをアクアに報告することなどできるものか。
「ま、私を呼んでくれたのは正解でしたね。ですが、フラフレ様を起こす手段を伝授しておくべきでした。申し訳ありません」
「起こす方法? 今も寝ているというのに、なにかコツがあるのか?」
「はい。しかも簡単な方法です」
アクアがフラフレに服を着させたため、もうフラフレを見ても大丈夫だ。
それにしても、服を着せている最中に目覚めないものなのだろうか。
「フラフレ様。どろんこ遊びの時間です!」
「ふぅああい!?」
今までぐっすりすやすや寝ていたフラフレが、目覚めの呪文が発動したかのようにピクリと反応して目を開いた。
「ふぁぁぁあああああ。のうえんでつちと遊ぶ〜……。んんっ? あれ?」
「気がついたか……?」
「あれ? ここは新しい農園ですか?」
フラフレは寝ぼけながらきょろきょろと周りを見渡す。
しばらくして、フラフレがなにかを思い出したかのようにハッとした。
「あ! そういえばお風呂の中で気持ちよくなっちゃって眠気が襲ってきて……」
「そうだ。湯船の中で睡眠は危険だ」
「寝ぼけていつの間にか着替えていたのですか?」
「フラフレ様をここまで陛下が運んでくれたそうですよ。私が服を着させました」
「あぁ……それはお手数をおかけしてしまって申し訳……へ? はこぶ?」
「すまぬ。タオルを厳重に巻いてはいたが」
「ひょぇぇええ……! あ、でも助けてくださりありがとうございます」
フラフレは一瞬恥ずかしそうな表情をしたと思ったが、すぐにぺこりと頭を下げてきた。
「ところで、私どれくらい眠ってしまったのでしょうか……」
「そろそろ日が暮れる」
「そんな……申し訳ございません。フォルスト陛下を連れて行きたいところがまだあったのに、寝てしまうなんて……」
フラフレがしょんぼりした態度になってしまった。
彼女が起きているときの仕草は可愛いと思ってしまう。
まだフラフレは望みを叶えられていないようだが、もう日が暮れてしまう。
一日だけとフラフレは言っていたが、願いを叶えるためならば時間はつくるつもりだ。
「フラフレよ、別の日にフラフレの行きたいところへ私も同行しよう。だから落ち込むことなどない」
「良いのですか!? だって、国王って忙しいでしょう? 私ばかりに時間を使ってしまっては」
フラフレは私のことを気遣ってくれているようだ。
無邪気で楽しむことが大好きな性格の上に気遣いまでできるとは。
ますます惚れてしまいそうだった。
「心配しなくとも良い。フラフレが望むのならば時間は可能な限り作る」
「ありがとうございます!!」
フラフレと一日過ごしてみてわかったことがある。
このままではフラフレが危険だ。
純粋で無知すぎるため、いつ他の男から危険な目に遭わされるかもわからない。
しばらくは私が側につき添って敵から守らなければならないだろう。
そのために、国務を迅速に終わらせてなるべくフラフレと時間を過ごすことに決めた。
だが、もうひとつ。
「フラフレよ」
「なんですか?」
「今日は私も楽しかったしなぜか疲れも取れたような気がする。ありがとう」
「良かったです~!!」
フラフレの笑顔を決して汚してはならない。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ここで今日投稿した新作のお知らせです。
【ご用済みと言われて殺されかけた魔法使いの少女が幸せを掴んでのんびり暮らすまで〜回復魔法で王様の病気を治したら、王様たちに気に入られました〜】
廃棄聖女を気に入っていただけた読者様なら、楽しく読めるんじゃないかと思えるような展開と作風になっていますので、こちらも是非よろしくお願い致します。
なお、廃棄聖女ですが、この後の展開や何文字程度で完結させるかなどを考え中のため、一旦毎日更新は停止します。
もちろん、今作は必ず完結まで描き続けますので、更新をお待ちくだされば幸いです。





