【フォルスト視点5】フォルストは苦労する
「むにゃむにゃ……」
「寝ているだけか……脅かしおって……」
だが、フラフレの顔が真っ赤になっている。
このまま放置していては危険だ。
「フラフレよ! 起きろ!!」
「むにゃむにゃ……」
アクアから聞いたことがある。
一番大変でなおかつ危険な任務がひとつだけあって、それがフラフレを起こすときらしい。
とにかく寝相と寝起きが酷すぎるそうだ。
今のフラフレの寝相に違和感はないが、声をかけても起きる気配がまるでない。
「まったく……。せめて服さえ着てくれていれば……」
湯船の中で深い睡眠は危険だ。
なんとかタオル越しにフラフレを担ぎ、外に連れ出さなければ命に関わる可能性がある。
担いでいる最中にフラフレが目を覚ましたら私の命も危険だ。
だが、考える必要もない。
「よいしょっと……」
なんとかタオルを駆使してフラフレをお姫様抱っこのような状態にして脱衣所まで連れ出した。
寝れる広さがある椅子があるため、そこにフラフレを寝かしてタオルをさらにかぶせた。
私の身体をかわかしてから服を着たあともフラフレはまだ眠っている。
「ふっ……全く、無防備にもほどがあるわい……」
しばらくフラフレの寝顔を見ながら、私も隣の椅子に座ってくつろいでいた。
そして、いつの間にか目を閉じてしまった。
♢
しまった。
いつの間にか寝てしまった。
ふとフラフレのほうを振り向いたら、とんでもない事態になっていた。
「ぶふぅぅううっ!」
アクアが大変だと言っていた理由がよくわかった。
さっき寝かしつけた状態とはまるで別の格好になっていた。
椅子からは落下状態。
タオルは全て床に散乱している。
フラフレは両手を頭の上にあげて万歳状態。
両足は激しく開脚していて口が大きく開いている。
つまり、ここまで細かく説明できるほど観察してしまったということだ……。
だが、それも仕方がなかった。
最初こそ裸体を見てしまって動揺してしまったが、フラフレの胴体を見て驚きを隠せなかったのだ。
「このアザは最近のものではないだろうな……」
フラフレの身体の至る部分で全て服で隠れるような箇所、治っても痕になってしまったような変色した箇所が複数あったのだ。
これはやはりハーベスト王国で暴行を受けていたに違いないと確信した。
同時に、フラフレのことを尊敬した。
「そうとう辛い思いをしてきたのだろう……。かわいそうに。だが、今はこんなにも元気にしているとは。よほどメンタルが強いか我慢強いか……。ともかくフラフレは強い子だ」
小声で呟きながら、ふたたび全裸のフラフレにタオルをかぶせた。
今後も元気なフラフレを見ていたい。
できる限り力になれるよう尽くそうと、私は心の中で誓った。
だが、その直後だ。
「うーーーーん!! んんうううぅぅぅっ!! がぁぁっ!!」
せっかくかぶせたタオルを蹴っ飛ばしてくれた。
再び全裸だ。
これ以上見るわけにはいかないし、もう一度だけタオルをかぶせてから脱衣所の外で待つことにした。





