【フォルスト視点4】フォルストはフラフレに甘えてしまう
「アクアに頭洗ってもらったときすっごく気持ち良かったんですよ〜」
「いや……しかし」
「良いから良いから♪」
フラフレはいやらしい気持ちで誘っているわけではないことくらいは容易に想定できた。
私も度重なる押しに負け、なにが正しいのかよくわからなくなってしまった。
「うむ……では宜しく頼む」
「はい」
頭だけならまだ良いだろう。
フラフレは、私の頭を丁寧にマッサージしてくれた。
「確かに気持ち良いな……」
「でしょう?」
フラフレの素手が私の頭を撫でてくれているようだった。
力加減云々よりも、フラフレの優しさが十分に伝わってきていて心地良い気分だ。
一緒に入浴というのは問題があるかもしれないが……。
「はるか昔、このように頭を洗ってもらったことがあったような気がするような……」
「え? なんですか?」
小声でボソリと喋っていたから、フラフレには聞こえなかったのだろう。
これに関しては私の過去の話だ。
特に喋る必要もあるまい。
「なんでもないよ」
「んーー、よいしょ……よいしょ……」
「フラフレよ、あまり無理することもない。そう長くマッサージしていては腕と指が疲れるであろう」
「もう少しやりますね。いつも国のために頑張っているフォルスト陛下も疲れを癒しましょう〜」
「あぁ……ありがとう」
完全にフラフレのペースに流されていることをこのときの私は気がつかなかった。
ただただ、居心地の良いマッサージとフラフレの優しさを楽しんでいた。
「じゃあ、今度は一緒に入浴ですね」
「今日は貸切だ。タオルを着用したまま入りたまえ」
「へ? あ、はい」
フラフレはごく自然と温水に浸かった。
さすがに私の前ではダイブはしなかったか。
私もフラフレに続き、ゆっくりと湯船につかる。
「ふぅ……」
こうやってゆったりと風呂に浸かったのはいつぶりだろうか。
毎日どうやったら民が少しでも楽になり食に困らなくなるか考えていて、なにをしていてもそればかり考えていたな。
「なんか、良いですね」
「ん? なにがだ?」
「フォルスト陛下のそういう顔、なんというか凄くリラックスしている感じがしていて」
「そうか? フラフレのおかげかもしれんな。ありがとう」
「ひょえ!? そんなことは……」
おや、まだ入ったばかりだというのにのぼせているようだ。
フラフレの顔が赤くなっている。
「そろそろ出るか?」
「もう少しだけ良いですか?」
「私は構わぬが……」
しばらく放置し、私は少し離れた場所で考えごとをしていた。
主にフラフレのことだ。
彼女は聖女だ。
どう考えてもハーベスト王国が放っておくとは思えない。
だとしたらフラフレは少なからず王宮に滞在することになっていただろう。
だが、そのわりに知識があまりにも未熟なのだ。
「まさか……な……」
私のイヤな予感が正しければ、フラフレはとんでもない仕打ちを受けていたことになる。
だが、今のフラフレは無邪気ではしゃぐ元気な女の子だ。
もしも私の予感が合っていたとしたら、こんなに元気になっているとは思えない。
やはり考えすぎか。
「フラフレよ、少々聞きたいことがある」
「…………」
返事がない。
近づいて再び声をかけた。
「フラフレ?」
「…………」
「まさか! おい!!」
あわててフラフレのタオル越しにだが身体に手を触れた。





