42話 フラフレは金を飾る場所で悩まされる
ミラーシャさんの農園でどろんこ遊びを楽しんで帰宅してから、お風呂に入った。
身体も綺麗にしてからの夕飯。
もはや天国だ。
しかも、今日は話があるようで、フォルスト陛下と一緒にご飯が食べられる。
幸せすぎて身体ごととろけてしまいそうだ。
先ほど野菜をかじったあとだが、私の胃袋はまだまだ入る。
むしろ、出てきたものは全て食べるつもりだ。
残してしまうなんてもったいなさすぎる。
食事がようやく後半戦になった時点で私の胃袋はパンパンだ。
お腹に詰め込みたいのだが、身体が言うことを聞いてくれない。
「うっふぅぅ……」
「無理することはない」
「すみません、これ夜食にするので袋に入れて持ってって良いですか?」
「……好きにして構わぬが、寝る前に食べて平気か?」
「はい。美味しいので問題ないかと」
「いや……、そういうことではないのだよ……」
フォルスト陛下との会話はいつもどおりだった。
聖女の件があったから、色々と聞かれるのかなとも思っていたが、普段となにも変わらない。
この国は私に強要したり強制してこないから好きだ。
「ところでフラフレよ、聖女だと確信していながら言及せずにすまなかったな」
「むしろどうして私が聖女なのかどうか聞かなかったのですか?」
「色々と理由はある。特に、我々がフラフレに聖女なのかと聞くようなことをすれば、フラフレ自身が身構えてしまい落ち着けなくなるのではないかと思ったからだ」
そのとおりだったかもしれない。
ハーベスト王国でのトラウマは拭いたくても簡単に消せる感じではない。
フォルスト陛下たちは無理に強要してこない人たちだとはわかっていても、どうしても警戒してしまいそうな気持ちにはなっていただろう。
気配りしてくださるフォルスト陛下に感謝しても足りないほど嬉しかった。
「最初の農園の主が元聖女だとは私も知らなかった。だが、彼女が導いてくれたおかげでこういう話ができるようになったな」
「はい。私自身も聖なる力が使えなくなっていたと思っていましたからね」
「ところで、聖女だとわかり今までの報酬もしっかりと与えたいのだが、やはりいらぬのか?」
「金貨でしたっけ?」
「あぁ。ずっと断るものだから、すでに五十枚以上預かっているわけだが……」
五十枚も部屋に飾れないからなぁ……。
床に飾ったらアクアに片づけられちゃったし……。
前に、もらった金貨を王宮の通路に飾ろうとしたんだけれど、それもアクアに止められてしまった。
すでに金貨の飾れる場所がどこにもない!
あんなに綺麗なものを飾らないなんて……、ここの人たちは綺麗なものに興味はないのだろうか。
「それとは別にだ。フラフレには感謝の意を込めてなにか望みを叶えたいと思っている」
「望みですか? どんな願いでも!?」
「そうだ。可能な限りになるが、願いを叶えてあげたい。……待て。念のために言っておくが、死人を生き返らせたり永遠の命がほしいというような願いは不可能だがな……」
「うーーーーん……となると……」
ご褒美的なものなのかな。
だが、すでに頼まれている仕事自体が私にとってはご褒美である。
これ以上ご褒美をもらったらバチが当たりそうだ。
「う~~~~ん……あ!」
良いこと考えちゃった。
ご褒美で私が楽しめて、なおかつフォルスト陛下も楽しめる方法を思いついた。
フォルスト陛下は毎日国のために一生懸命頑張っている。
しかも、私なんかよりも何倍も頑張っているのだ。
だったら、日頃の疲労が溜まっているだろうし、むしろフォルスト陛下が元気になれそうな提案をしようと思った。
「フォルスト陛下が私に一日つき合ってもらうとかが良いですっ!」
「な!?」
横で起立の姿勢で待機しているアクアが声を出して笑っていた。
今まで、なにがあっても微動だにせず、飲み物を注いだり皿を下げたりするとき以外は絶対に動かなかったアクアがだ。
これは私ってばすっごく良い名案だったんじゃないだろうか。
「ご褒美ご褒美♪」
「ま……まぁ……、私で良いのなら構わぬが」
「はい。じゃあフォルスト陛下がお休みの日に私が行きたいところへ着いてきてもらうってことで」
「そんな望みで良いのか……?」
「はい! むしろ最高ですね」
「ぬ……!!」
あれ、なんか予想以上に驚かれてしまったみたいだけれど、大丈夫だよね?





