41話 フラフレは再び聖女としても活動することにした
聖なる力が元に戻っていただけでなく、今までよりもパワーアップしていたこと自体は嬉しい。
美味しい野菜を育てることに特化できるだろうし、土も良いものにできる。
さらに、太陽だって姿を見せてくれるようになるだろう。
だが、また特別な存在だからと言って自由を許さなくなったりでもしたら……。
「う~~んんんっ……」
「トイレにでも行きたいのですか?」
「ん?」
「ここは野外ですからね。必要とあれば目隠し役くらいならできますが」
私が一人で悩んでいたら、アクアがすかさず別視点で心配してくれた。
アクアにならば本音で話しても変なことにはならないだろう。
「違うよっ! そうじゃなくて……、私、今の生活を終わりにしたくないの」
「はい?」
「つまり……聖女だと知られても、毎日どろんこ遊びだけは続けたいの」
「すれば良いじゃないですか」
「へ?」
アクアは当たり前のような表情で私にそう言ってきた。
むしろ、土と遊ぶ暇など考えずに、とにかく聖なる力を使って国のために働いてくれとか、そういう展開が待っているんじゃないかと思っていたのだ。
「フラフレ様の力は素晴らしいとは思いますし、国に協力していただけたら平和で豊かな国になるとは思いますよ」
「だから、限界まで力を使ってほしいとか頼まれたり……」
「そんなこと強要する人が現れたら、陛下が黙っていないと思いますのでご安心ください」
私はなにをマイナス思考で考えていたのだろうか。
聖なる力を使えるようになっていたとわかった瞬間、ハーベスト王国での記憶をやたらと思い出してしまったせいかもしれない。
あの地獄生活は二度と味わいたくないという考えから、周りからはトイレを我慢しているように思わせてしまうくらいに悩んでしまったのだ。
「フラフレ様は聖女だとしても、ご自身のやりたいことをやれば良いのですよ。義務ではありませんから」
「優しいんだね……」
「すでに十分すぎるくらいリバーサイド王国にその力で恵みをもたらしてくださっていますからね」
聖女の力で祈る行為は日常的にやっているルーティンみたいなものでもある。
私はこれを止めるつもりはないが、強制ではないと考えたら心がとても楽になった。
「ありがとね、アクア」
「当然のことを言ったまでです。おそらく陛下がここにいたら同じことを言っていると思いますよ」
「ミラーシャさんもありがとう。生まれ変わった感じ」
「こちらこそありがとうね。アンタのおかげで収穫もできるし、しばらくは蘇った土で良い野菜を育てられそうだわ。でも、あんまり無理はするんじゃあないよ。聖女の力に頼るべき部分は、本来は太陽の力で自然と仲良くさせるためのものなのだから」
さてと、私が聖女として再び活動することができることはよくわかったし、お腹もすいてきた。
農園で育った野菜をひとつだけもらって、そのままムシャムシャとかじりついた。
がぶっ!!
もぐもぐ。
ぱくぱく。
ごっくん。
「規格外の聖女って食べ方も規格外なのねぇ……」
「フラフレ様っ!! そういう食べ方はあまり尊敬できませんよ!」
「はむはむ……。ふへぇ?」
さっきまで私に尊敬するような視線を向けていた二人だが、今度は呆れたような視線になっていたのだった。
お腹も満たされたし、帰ってお風呂入りたい。