38話 フラフレは礼儀正しく喋ってみた
王宮の農園で遊んだあと、そのまま最初の農園に向かった。
王宮から一番近い場所にあり、しかも最初に王宮に応募が来た農園らしい。
しかも、詳細はフォルスト陛下も知らないようだが、前国王陛下が関わりのあった人物だそうだ。
最初のどろんこ遊びとしては絶好の場所だ。
「フラフレ様……。王宮の外で人と関わる際は、以前に教えたとおりにお願いします」
「うん。今日は勉強も兼ねているからね!」
今回私が外の農園で遊びたい理由はもうひとつある。
あまりにも世界のことを知らなすぎるから、色々な人と関わって人間づき合いや常識を学んでいきたいと思ったのだ。
アクアから最低限の礼儀作法や挨拶は教えてもらったが、やはり実戦が一番だと思う。
王宮の近くのため、歩いて向かった。
アクアと話をしている間にすぐ到着した。
農園には、一人のおばあちゃんが腰をかがんで農作業をしている。
六十代くらいのように見えたが、まだまだ元気いっぱいといったような感じだ。
「おやおや、アンタが野菜を作ったという子かい?」
私とアクア二人で農園に来たわけだが、おばあちゃんはなぜか私を見た途端、核心をついたかのようにそう言ってきた。
「はじめまして。私が王宮で野菜を育てているフラフレと申します」
挨拶をしてお辞儀をした瞬間、横目でアクアをジッと見た。
ちゃんとできてた? まちがっていない?
そう視線で訴えると、アクアはコクリと軽く頷く。
「お初にお目にかかります。この度はこちらにてお世話になります。名乗り遅れましたが、私はこちらフラフレ様担当メイドのアクアと申します」
むずかしいことばがいっぱい……。
アクアはすごいや。
アクアのような礼儀作法を身につけるにはまだまだ先か。
「ほっほっほ……。こんなに可愛い子が二人も来てくれるなんてね。しかもお天道様も歓迎してくださったかのように姿を現しおってからに。おっと……、あたしゃミラーシャというよ」
ミラーシャさんと名乗った人は軽くお辞儀をしたあと、農園の近くに設置されているテーブルに向かう。
テーブルの上にあった飲み物を二つ手に取ってそれを私たちに手渡してくれた。
「ありがとうございます」
「ほっほっほ。アンタ、そんなにかしこまらなくて良いわさ。あたしには自然体で接してくれて構わないよ」
こういう場合どうしたら良いものかわからない。
アクアに助けを求めるように顔を向けると、アクアはニコリと微笑んだ。
つまり、いつもの王宮でいるように自由にして良いということなのだと解釈した。
「じゃあ、遠慮なく。飲み物いただきます」
「ところでアンタぁ、今まで見たこともないようなとびきりの力を持っているわねぇ。納得、納得」
「はい?」
ミラーシャさんは私を見ながら意味深なことを言いながらニコリと笑顔を見せてくる。
私はずっと地下牢生活をしていたし、力は非力のようなものなんだけれどなぁ……。