34話 フラフレはすごーく注意される
「フラフレ様……。国営の温浴施設へ行くことは構いません。ただし、いくつか事前に注意したいことがございます」
「う、うん?」
「あの施設は民衆が使える一般開放日、貴族専用の日、王族のみの貸切と日替わりで変化します。確か今日は民衆も使える一般開放日となっているのですよ」
是が非でも、今日行ってみたい気持ちになった。
今までは人と交流する機会がほとんどなかったから、人づき合いをしてみたかったのだ。
「つまり、今日行けば、リバーサイド王国に住んでいる色々な人たちがいっぱいいるってことだね?」
「はい。しかし一般開放日に本来は王宮に仕えていたり滞在している者は基本的には利用しません」
「じゃあ今日はダメってことか……」
「いえ、せっかくですから行ってみるのも良い勉強になるかと思いますので向かいましょう」
「やったーーーー!」
リバーサイド王国へ来てからずっと王宮で生活させてもらった。
この国はどんなところなんだろうかと知れる機会がもらえたことも嬉しかったのだ。
「注意事項としては、いつも王宮の温浴施設でやっているような、浴槽にダイブは絶対にやってはいけません。それから、どんなに感動しても大声を出したりはしゃぐのも控えてほしいですね」
「気をつけます……」
王宮で使わせてもらっている入浴施設は自由だったが、運営している施設は色々と決まりがあって普段のようにはできないらしい。
「念のためにフラフレ様の護衛も目立たないようにではありますがつけておきましょう。私も同行はしますので」
「じゃあ、アクアと一緒にお風呂入れるってことだよね♪」
「まぁ……そういうことです」
前に一緒に入ったとき、アクアに向かって「水鉄砲プシュー!」ってやってキャッキャしていたことを思い出した。
あの日は楽しかったなぁ。
「言い忘れましたが、決して浴槽の中で遊んではいけませんよ。水鉄砲ごっこもダメです。本来は浴槽では大人しく浸かるものなのです」
「そうだったんだ。もしかして、今まで王宮の入浴も私の入り方ってマズかった……?」
「いえ、フラフレ様は無邪気で可愛いのでそのままで良いです。陛下もフラフレ様の無邪気な……ゲホッゲホ!! と、ともかく、私たち関係者以外が一緒のときだけはしっかりしましょうと、それだけですよ」
「うん、わかった。外の入浴施設では大人しくします」
さっそく準備を整え、移動するためのカーテンつきの馬車へと案内された。
「お馬さん、よろしくね~」
「あぁぁそんなに近づいたら危ない!」
──ヒヒィィィーーン!
私が馬の首回りをそっと撫でると、私の頬をペロペロと舐めてきた。
「ははは~くすぐったいよ」
ふと、横を見るとアクアが顔面蒼白になっていた。
どうしてそうなってしまっていたのかわからなかった。
「何でこの世の終わりみたいな顔をしてるの?」
「フラフレ様が無茶をするんじゃないかとヒヤヒヤしたからですよ! まさか動物に好かれる資質をお持ちだとは知りませんでした」
「資質じゃないよ。でも、今このお馬さんは仕事する前に撫でられたいって顔をしていたから撫でただけ」
「……そんなことがわかるのですか?」
「なんとなくだけれど」
「フラフレ様にはまた驚かされましたね……」
動物と触れ合うのはこれが初めてだった。
人と話しているときと同じように、動物も表情を見て会話ができるような気がしたのだ。
馬車に乗り込み、温浴施設へと向かった。





