33話 フラフレはペンダントをもらう
「フラフレ様……。それはさすがに……」
「綺麗でしょう~?」
私はフォルスト陛下から受け取ったメダルを、テーブルに飾ってある金貨の真横に置いた。
金貨よりもメダルのほうが目立っているし美しい。
私は満足しながらアクアに見せたのだが、アクアは手を額にあてながら苦悩しているようだった。
「金貨はまだ良しとしましょう。しかし王宮のメダルに関しては、フラフレ様自身が常に身につけていたほうが良いものです。国家公認の身分証明書としても使えますから」
「うぅん……。でも、私ってドジなところもあるし落としたら怖いなって」
「なるほど……。それでは、外側からはメダルが見えないようにしつつ首からぶら下げてみるというのはいかがでしょうか?」
「どうやって?」
「用意してきますので少々お待ちください」
アクアはそう言って部屋を出ていき、手になにかを持ってすぐに戻ってきた。
「少々メダルをお借りしてもよろしいでしょうか?」
「うん」
メダルを手渡そうとしたとき、アクアは手袋のようなものを装着してから受け取った。
どうやら、絶対に汚さないようにするためにつけてくれたのだろう。
金属製の細長い輪っかみたいな物の中央部に、メダルと同じくらいの大きさをしたケースがあり、その中に丁寧にメダルを入れた。
「これを首からかけてください。これはペンダントと言います」
私はペンダントをかけてみると、胸のあたりにメダルがぶら下がった状態になって服に隠れている。
なるほど、これならば落とす心配もなさそうだし常に持った状態でいれるというわけか。
「ありがとう! 農園と入浴しに行くとき以外はつけるようにするよ」
「気に入ってくださったようでなによりです」
ペンダントに守られているメダルを何度も眺めて、両手で大事につかむ。
「むふふふっふっふぅぅ~~綺麗~♪」
「はぁ……。フラフレ様、ヨダレが垂れています」
「あ……。いけないいけない」
「ヨダレを服で拭いてはいけません」
アクアのポケットからなにかを取り出そうとしていた。
その瞬間、私は以前学習したことを思い出し、持っていたハンカチでしっかりと顔を拭いた。
「ふふ……、着実に品性も身についてきていますね」
「アクアがいっぱい教えてくれるからだよ、ありがとう」
アクアは私より二歳年上で、頼れるお姉ちゃんといったポジションになりつつある。
身の回りの世話をしてくれるメイドという立場ではあるけれど、同時に私の教育担当をしてくれているのだ。
私は無知すぎるし、世間の常識もよくわからないから、アクアに教えてほしいと頼んだのである。
「まだ日暮れまで時間があります。本日も書庫へ向かいますか?」
「えぇとね、せっかくだからこのメダル使って温浴施設へ行ってみたい」
「あぁ、国で運営しているお風呂のことですね……」
アクアの表情が少し曇る。
ものすごーく面倒に巻き込まれましたと訴えているような顔だった。





