32話 フラフレは綺麗なピカピカしたものを授かる
さすがに玉座の間では清楚な格好をするように言われたため、普段よりもピシッとした白色のドレスを着用している。
これって貴族やお金持ちが着るような服だよね……。
「フラフレ様、ここから先が玉座の間になります。くれぐれも派手な粗相は起こさないようにしてくださいね」
玉座の間の扉が開いた。
「す、すごい……!」
部屋の奥には、いかにも高級そうな椅子が高い位置に設置されている。
床には赤いカーペットが敷かれていて、ホコリひとつ被っていないような清潔さだ。
フォルスト陛下は玉座の椅子の横に起立の姿勢で待ってくれているようだった。
他には誰もいないため、私とアクア、フォルスト陛下の三人だけである。
「来たか。フラフレ殿よ、突然このような場所に呼び出してすまない。アクアは下がっていてくれたまえ」
「かしこまりました。それではフラフレ様、失礼いたします」
アクアは玉座の間から退室してしまい、私とフォルスト陛下の二人きりになった。
普段ならドキドキしたりするのだが、今回ばかりは緊張のほうが優っている。
フォルスト陛下も、今日に関しては普段よりもさらに王様らしくビシッとした格好をしているのだ。
「フラフレ殿よ。此度のご活躍は大変大儀であった。よってここで国の代表としてお礼を言いたかった」
「はい?」
大儀という意味はわかっている。
だからこそ何のお礼なのかがわからなかった。
むしろお礼を言いたいのは私のほうなのだから。
「フラフレ殿は今、なにに対してのお礼かわかっておらぬようだな?」
「はい……。むしろ私のほうがお礼を言いたいことがいっぱいあるくらいです」
「今回はフラフレ殿に任せた農園のことである」
「はて……?」
むしろ大量の野菜を運んだりする収穫作業は全て王宮の人たちがやってくれている。
それこそ手伝ってくれてありがとうございますと、私が言いたいくらいだ。
「フラフレ殿の作ってくれた野菜を民たちに配給した。それを食べてもらった結果、なぜかはわからぬが体調不良だった者たちは回復し、食べた者たちの労働力が上がったのだ!」
「そんなに食料不足だったのですね……」
「それはそうだが、フラフレ殿の作ってくれた野菜に何らかの力があることがよくわかった」
知らなかった。
私はただ、土や野菜とは仲良くしていたい。
ずっと農園で楽しくワチャワチャはしゃいでいたい。
それだけしかしていないし、なにか手を加えた自覚は全くないのだ。
「はて……? 久しぶりに野菜を食べて栄養が摂れたからとかでしょうか」
「無意識であのような素晴らしい野菜を育てていたということか」
「え、えぇと……」
「どちらにせよ、今回はここで正式に表彰をおこなう。フラフレ殿は農園にて多大なる活躍をし、国のために最善を尽くし国民の力にもなった。大儀であった。これからもそなたの活躍を期待している」
「は、はい。頑張ります」
つまり、聖女としてではなく、農園で野菜を育てたから褒められたってことか。
そう解釈したら、感情がまた爆発してしまった。
「ありがとうございます!! 今後も農園で楽しく野菜を育てたいと思います!」
「うむ、それで良い。それから……報酬金とは別にこれを捧げよう。こちらへ来たまえ」
フォルスト陛下の前まで向かうと、片手サイズの箱のようなものを手渡してきた。
「中身を確認してくれたまえ」
受け取った箱を開けると、金貨とは違った、金色でできた丸い形をしたものが一枚入っていた。
よく見ると、私の名前が刻まれていてキャベツの絵が彫られている。
「それは王宮のメダルだ。これを見せれば貴族しか利用できない施設も無料で使えるようになる」
「私の名前だぁ~!!」
フォルスト陛下の説明は良くわからなかった。
だが、金貨に似たようなキラキラしたメダルに自分の名前が書かれていたことがとても嬉しい。
このことにだけ喜んでいることがフォルスト陛下が気がついたのか、さらに説明が追加された。
「ちなみに……、国営の大浴場も完全無料だ。王宮の大浴場とはまた違った入浴施設を楽しめるぞ」
「本当ですかぁぁぁ!?」
「はっはっは。やはりフラフレ殿にはこう伝えたほうが喜ぶようだな」
「ありがとうございます! 大事にします!!」
さっそくいただいたメダルを部屋に飾ることにしよう。





