27話 フラフレは泣いてしまった
「フラフレ殿よ、ここにいる間は恐がる必要はない。今回の文字の読み書きも一度で覚えられずとも、無論ミスをしても構わないのだ」
「え……?」
私には想像もつかない言葉だった。
「私だってミスをすることはある。だが、その度にお仕置きなどされたことはない。ミスするというのは私だからではなく、皆が経験することだ」
私は黙ってフォルスト陛下の説明を聞いていた。
徐々に今まで怖がっていた部分が消えていくような感じだった。
「逆にいえばミスをしない人間というのは、なにごとも挑戦しない者だ。故に一度や二度、間違いを起こしたからと言って叱責するようなことを私は絶対にしない!」
「う……うぅっ……」
フォルスト陛下の優しい言葉を聞いて泣き出しそうになったが、必死に堪えた。
「フラフレ殿よ……。おそらくキミはずっと厳しすぎる環境にいたのだろう。だが、もう恐がる必要はない。無論、なにか間違いを起こせば正しき道へと誘導するための叱責はあるだろう。だが、手をあげたりなにかを没収することは決してない!」
「優しすぎです……」
ダメだ、やっぱり涙が出そう。
グッと堪えていたが、フォルスト陛下の決定打のような一言は、私の感情を心の底から引き出すようだった。
「フラフレ殿よ……、今まで大変な日々だったのだな……」
「は……はい……。つらかった……です」
「ミスの一つだけで罰を受けていたということは他にも色々とあっただろう。だが、もう安心してくれたまえ」
「安心……?」
「私はフラフレ殿が素晴らしい人格の持ち主だと信じている。これからキミは、絶対に幸せになれる! 大丈夫だ!」
フォルスト陛下の言葉はなぜか自信に満ちているように聞こえてきた。
せっかく文字を教わっている最中なのに、私は今まで黙ってきた感情や気持ちが、一気に爆発してしまう。
大粒の涙がぽろぽろと溢れてしまったのだ。
「どうして……、こんなに優しくしてくださるのですか……?」
「……今は言えない」
フォルスト陛下が少し困ったような顔をしたから、もう聞かないことにする。
私の感情があらわになった瞬間、窓からの明るい日差しが部屋を照らす。
雲が晴れ、太陽がハッキリと現れたのだ。
「ほう……。外も良い天気になった。今の天気のように、フラフレ殿も元気になってくれたら嬉しい」
「もう大丈夫です。フォルスト陛下の言葉で救われました」
「数字も教えようと思っていたのだが、明日にするか?」
「いえ、教えていただけるのなら今日覚えたいです!」
フォルスト陛下は優しく言ってくれたけれど、なるべく一度で覚えられるよう集中は続けることにした。
だが、覚えられなかった場合のお仕置きを恐がる必要はなくなったのだ。
私の気持ちがどれだけ楽になったかは、言うまでもないだろう。
「また一度で覚えたか……。素晴らしいことだが、間違えても罰など与えぬぞ?」
「はい。おかげで恐怖心は完全になくなりました!」
「そうか。確かに表情も穏やかになったな。では続きを教えよう」
どことなく、フォルスト陛下も教えてくれることを楽しんでいるように見えた。
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