22話 フラフレは協力したくなった
「昨日育てた野菜は全てお渡しします。代金に金貨一枚いただこうかと思います」
「なに!? たった一枚だと……!?」
「しばらく毎日野菜を育てますので、その野菜分も込みで」
「いくらなんでも安すぎるだろう……」
フォルスト陛下たちからこんなに厚い待遇を受けているのだから、私だってなにか協力したい気持ちになる。
せめて国のお金を大事にしてもらいたい、そう思った。
それに、そもそも私はお金よりもっと良いものをいただけているのだ。
「私も王宮に居させていただけるのですし、農業も趣味ですから。自分が作った野菜を誰かが食べてくれるなんて、こんなに嬉しいことは経験したことがありませんよ。でも……、この金貨はとても綺麗で気に入ってしまったので、一枚だけいただければ部屋に飾っておきたいなって……。ワガママで申し訳ありません」
「か、飾る? 欲がなさすぎる……。全くもって驚かされてばかりだ」
「ところで野菜なんですが、今日お渡しする量は半分でもよろしいですか?」
「いただけるのならいくらでも構わぬが、一体半分もどうするというのだ?」
「全部葉っぱをちぎり、土に植えて再び育てようかと」
野菜育成の話を始めた途端、どんどんとヒートアップしていることに気がつかず、ひたすら説明を始める。
「葉っぱの部分でも良いんですけれどね、特に芯の部分を植えると、とーっても立派に育ちやすいんですよ~! あ、でも昨日いただいた種から育てた野菜も良い感じになったかと思いますけれどね。野菜は採れたてを水で軽く洗ってからそのままガブッとした瞬間がもうたまらなくて~……って、あ……」
つい、夢中になってしまった。
フォルスト陛下を終始無言の聞き手にさせてしまったのだ。
顔が若干赤いような。もしかしたら、怒らせてしまったのかもしれない。
ジャルパル陛下が顔を真っ赤にさせないようにしていたときのことを思い出した。
「変な話ばかりしてしまい申し訳ありません……」
「なぜ謝るのだ? フラフレ殿は本当に野菜や農業が好きなのだなと、感心しながら聞いていたのだが」
「え……、でも顔が少し赤く……」
「いや、それは気のせいだ!」
急に声が大きくなったから少し驚いてしまった。
今度こそ怒らせてしまったようだ。
だが、どうしてこのタイミングで声を荒げるのか、私には全くわからない。
「大声を出してすまぬ。だが、やはり報酬は正当な額だから受け取ってもらいたい。そうしないと国としても示しがつかぬ」
「うーん……。それではせめて、ハーベスト王国で買っていた額や見た目ではなく、一般的な野菜の出荷相場にしていただけませんか?」
「ハーベスト王国からは十倍ほどの価格で仕入れていた。つまり……、金貨五枚だけになってしまうが」
「十分です。ありがとうございます」
このピカピカを五枚も……。
どこに飾らせてもらおうか。
「むしろ安価ですまない。ところで、野菜の収穫は任せてもらっても構わないか? あれだけの量をフラフレ殿が収穫するには無理があるだろう」
「お気遣いありがとうございます。では、収穫はお任せします。終わりしだいすぐに次の野菜を育てますね」
「天気も良くなってきたから、食料も少しずつ王都に流通できる。これで国も救われるかもしれない……」
フォルスト陛下はそう言いながら、なんと私に向かって頭を下げてきた。
「本当にありがとう」
「いえ、むしろ私のほうが……」
「国を代表して感謝する!」
お礼を言いたいのは私のほうだ。
命を助けてくれた上、部屋や食事まで用意してくれた。
しかも、私の大好きな農業までやらせてくれることになった。
こんなに嬉しいことが続いて良いのだろうか。
感謝の気持ちを伝えたかったが、フォルスト陛下がずっとお礼をくり返したため、伝えることができなかった。
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