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19話【リバーサイド王国サイド】フォルストとアクアの会議(後編)

「不思議なお方です。そういえば、フラフレ様が来てからですね。晴れたのも」

「確信した。フラフレ殿は聖女だ。それもかなり力を持った……」

「私も同感です。まさか種をまいた当日に実がなるとは……。フラフレ様があれだけ自信を持っていたのも納得しました」

「あぁ。彼女は野菜のごく一部から種と同様に育てるほどの力がある……」

「聖女だとしか思えませんね。ですが、これほど規格外の力は……、いくら聖女だといっても聞いたことがありません」


 なぜ聖女であるフラフレがハーベスト王国付近の荒野で行き倒れていたのか。

 二人からすれば、フラフレの存在や生き方について謎は深まるばかりだ。

 だが、フォルストは経緯云々よりも優先して今のフラフレのことを考えている。


「アクアよ。すまぬが……彼女が聖女かもしれないということは私たちの秘密とし、決してフラフレ殿にも問うようなことはしないでほしい」

「なぜですか……? この国の救世主かもしれないというのに」


 アクアは、フラフレに一筋の希望を見出した。

 リバーサイド王国はフラフレの力で救われるのではないかと。


「それが問題なのだ。彼女は聖女でありながら、荒野で倒れていた。何らかの理由で国から逃げ出した、もしくは捨てられてしまったのだろう。聖女だと知られれば皆がフラフレ殿の力に期待する。だが、今の彼女に負担をかけたくない。なにより、力を使うかどうかは彼女しだい。我々が無理強いするのはダメだ」

「本当に……、陛下は優しいのですね」

「強制されるつらさは身に染みて理解しているからな……」


 フォルストは幼少のころを思い出す。

 だが、それもすぐに心の中にしまいこんだ。


「ところで、これほどの聖なる力を使えるようになったということは、フラフレ殿の体調は良くなったのか?」

「時折フラつく場面も見受けられましたが、顔色はずいぶんと良くなりました」

「そうか……」


 まだ体力も回復していないのにあれほどの野菜が半日で育った。

 いかにフラフレが規格外の力を持っているかということは明白だ。

 だからこそ、フォルストは違和感を覚えた。


「不思議だと思わぬか?」

「フラフレ様のことですか?」

「彼女は我々から見ても聖女だと理解できる。聖女ともなれば国としても重宝されるはずだ。それなのに、見つけたときは今にも死にそうな状態だった……」

「調べますか? これはリバーサイド王国にとってもハーベスト王国との関わり方を考え直す必要が出てくるかもしれません」

「そうだな。現状ではどうしてもハーベスト王国の物資が必要になってしまう。故に法外な価格で食料だけでも仕入れている。国交断絶は避けたいんだがな……」


 フォルストに重い腰を上げるときがやってきた。

 リバーサイド王国にとってハーベスト王国の物資は非常に大事だが、関わるとろくなことにならないかもしれないという思惑のほうが勝ったのだ。


「ともかく、まずはフラフレ殿の体調を完全に回復させることだけに努めよ」

「承知しました。では、裏庭の畑はしばらくフラフレ様の好きにさせても?」

「無論だ。フラフレ殿が元気になれるのならいくらでも使って構わない。それから、彼女が作った野菜に関しては彼女の意向に任せる。言い値で買い取ると伝えてくれ」

「はい。しかし、あれほどの量と質になると、今のリバーサイド王国の相場としては金貨五十枚ほど必要になるかと……」


 金貨一枚はリバーサイド王国の平民の初任給ほどに該当し、一ヶ月は生活できる。

 つまりフラフレは約四年分の年収を半日で生産してしまったのだ。

 だが、フォルストは金貨を何枚払ったとしても、民衆の飢えをしのげるのであれば構わないと考えている。


「それくらい価値あるものをフラフレ殿は作ったのだ。私が自腹で支払おう。野菜は買い取ったのち、至急民衆に配給させるように」

「はぁ……。毎度のことながら、陛下の器の広さときたら呆れます」

「せめてもの感謝の気持ちだ。私はこのリバーサイド王国に救われたのだからな」


 フォルストはまた幼少期のことを思い出した。

 フラフレもこの国のあたたかさに触れて、元気になってほしい。


 そう想いながら。

ここまで読んでくださりありがとうございます。


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追放聖女のどろんこ農園生活 ~いつのまにか隣国を救ってしまいました~
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