14話【リバーサイド王国サイド】アクアの物言い(後編)
「フラフレ殿になにかあったのか?」
フォルストがカップを置いて話すように促すと、アクアは言いづらそうに続ける。
「えぇと……、フラフレ様は虐待され捨てられたのではないかと……」
「何だと!?」
虐待。捨てられる。
この二つの言葉をフォルストが聞いた瞬間、大きな声が部屋中に響き渡った。
「大浴場で一緒に入りたいと希望されたので、裸のつき合いをしました。そのとき、フラフレ様の身体中にものすごいアザがありまして……」
「殴られたということか?」
「はい、おそらく。しかも、今回はなかなか、と仰っていました。つまり、あの怪我は一度だけではなく何度もくり返し負われたものかと……」
フォルストは怒りを見せたものの、すぐに冷静になりフラフレの様子を思い出す。
「ありえる。彼女は相当なまでに身体が痩せこけていて、栄養失調。さらに身嗜みもボロボロだったな」
「仮にそうだとして、なぜ私たちに助けを求めようとしないのでしょうか」
「う~む……、告げ口をすれば殺すと脅されている。もしくは長きに渡って周りから酷く扱われ、人間不信。あるいは相手に迷惑をかけるからと遠慮をしている……」
「どれも陛下の過去そのものですね」
フォルストは苦笑いを浮かべながら再びカップに手をつける。
アクアとの会話のおかげで、自分がフラフレを徹底して助けると決意をした理由に気がついたのだ。
「あまり過去のことは引き合いに出さないでほしい。だがアクアに言われてようやくわかった。フラフレ殿は昔の私と似ていたから、似たようなことをくり返しているのかもしれないな。私がかつてこの国の陛下に助けられたように」
「ではフラフレ様は将来王妃になるかもしれませんね。陛下とオメデタですね」
「う~む……」
フォルストは黙り込んで顔を赤くする。
それを見たアクアは満足そうにフッと笑みをこぼした。
フォルストの伴侶になる者がようやく見つかったかもしれないと。
アクアもまた、フォルストの感覚による行動に期待しているのだ。
「今度は否定しないのですね」
「からかうでないっ! ともかく、フラフレ殿の過去は無理に聞かなくて良い。元気になってもらえるよう、フラフレ殿になにかやってみたいことはないか聞いてくれ。そして希望はできる限り叶えてやってほしい」
「承知しました」
アクアは王室を出ると、さっそくフラフレを保護する客室へ向かった。
フォルストのように救われてほしい。いや、自分たちが助けになるのだという覚悟をもって。