128話
「ジャルパルの行方先の可能性がホーリネス聖国……か」
王宮へ戻り、先ほどの情報をアクアがフォルスト様に説明していた。
フォルスト様もアクアと同じような反応をしている。
「アクアにとってはこの国の名が出てしまっては辛いことだろう……」
「私のことはお気になさらず」
「え、どういうことですか?」
「ホーリネス聖国は、私の両親が貴族たちを連れて集団移民した国です」
アクアがとても悲しそうな表情で教えてくれた。
「つまり……ええと、リバーサイド王国の元国王様たちが生活している国ってことかな?」
「生活というよりも、現在はホーリネス聖国を支配をしているかと思いますが」
「元々のホーリネス聖国の国王様は……?」
「…………」
アクアが困ってしまったように見えたため、すぐに聞くのをやめた。
ホーリネス聖国って、いったいどのような国なんだろう。
私も自分で調べてみるようにならなければ、かな。
「おそらくこの情報は事実だと思う。私もそのような予感がする」
フォルスト様の予感はほとんど当たる。
それを知っているからこそ、私もアクアもほとんど確信になった。
ジャルパルがホーリネス聖国へ向かったことを。
「予定より早くなってしまうが、明日にでもリバーサイド王国へ向けて出発しようかと考えている」
「は、はい。でも……ミーリは」
ミーリは体調を崩しての病み上がり。
さらにハーベスト王国の国民から非難を浴びている状態。
心配だと思っている。
しかし、フォルスト様は意外にも自信満々な表情で私の両肩に手を乗せた。
「彼女なら大丈夫。フラフレが一生懸命聖なる力を教えていたではないか」
「し、しかし、それが国民から怒られている解決にはならないのでは……」
「ミーリの一生懸命なところは必ず国民に伝わる。そしてフラフレのおかげで聖なる力も皆を説得できるほどのものになっているはず。さらに、マリとモナカもいるではないか」
フォルスト様が自信満々にそう言ってくれると、不思議と安心してくる。
言われてみれば、思い当たる節もある。
私もかつてはハーベスト王国の人々から嫌われていた。憎まれていた。
だから簡単に廃棄処分されてしまったのだ。
ところが今はどうだろう。
外を歩いていても全く問題なかったし、過去のことが嘘のようになっていた。
ミーリの信頼が戻るまでには、どうしても時間がかかってしまうだろう。
しかし、それまでこの国にいるわけにもいかない。
ミーリなら、きっとみんなから愛され女王様になると思っている。
心のどこかでそうなるまで見届けたいなと思っていたのかもしれない。
だがそれは私のワガママ。
リバーサイド王国へ帰って、そこから見守らなくては。
「体調も、王宮ちょくぞく主治医が診ていたのだから大丈夫ですよね?」
「ああ、彼のお墨付きも聞いているからすぐに元気になるだろう。そして、しっかりと名前を呼べるようになったのだな」
「あ……! そう言われてみたら……!」
今まで、どうしても彼の名前を口にするとき噛んでしまっていた。
今回はしっかりと呼べていたような気がする。
やったー!
私も成長できたんだ!
もう一度だけ呼んでみよう。
「王宮直じょくしゅぢー……」
噛んだ。
ただの偶然だったのかもしれない。
フォルスト様に対して、涙目で悔しいことをアピールしてしまった。
「……ま、まあそう落胆することもない。得意不得意はあるものだよ」
こうして私は、成長できたのかできていないのかわからないままハーベスト王国から帰る準備をすることになったのであった。
またいつか、この国にも遊びに来よう。
もう、かつてのように廃棄処分されてしまう非難はなくなっているのだし、会いたい人も増えたのだから。
この先ミーリが女王陛下として、ハーベスト王国の聖女として頑張っていけることを願いながら、私たちはハーベスト王国の王都から外へ出た。
ここまで長らくお付き合いくださりありがとうございます。
章分け設定は行なっておりませんでしたが、2章として進めていたミーリ編はここまでです。
次話以降、3章として執筆している最中です。
完成度を高めたいため、更新はある程度執筆が進みまとまるまではお休みさせていただきます。更新再開につきましてはSNSにてアナウンスします。
どうかお待ちいただけますと幸いです。
予告としては、大悪党ジャルパルがついに……。





