122話 フラフレはハーベスト王国の謁見に参加する(中後編)
「バルメル王よ、もしもこの話が事実であるのならば我が国に宣戦布告をしているということになるが」
「ま、待て! 本当に私は無実だ。兄上が勝手に脱獄し、私とて脅されていた身。ミーリさえ力を発揮してくれればフラフレなどの力も本来は不要」
「ならばジャルパルはどこにいるのです? 今一度捕らえ地下牢に入れるなり対処はできよう」
「おのれ兄上め……。結局私をハメおったのだな……!! 兄上は私の部屋に隠れているだろうよ……」
バルメルが悔しそうにしながらも白状した。
さっきまで微動だにしなかった警備兵が、待っていましたと言った勢いでバルメル国王に迫る。
「陛下。今の話は本当ですか!?」
「元国王とはいえ囚人者ですぞ!」
「囚人を匿うなど、国王とはいえ罪になりますが!」
「数々の不審。これは民衆も我慢の限界で大暴動になりかねませんが!」
「く……。兄上の仕業に過ぎないのだ……」
バルメル国王はすでに諦めたかのように大人しくなった。
一番はじにいた服装の異なる警備兵がバルメル国王に詰め寄る。
「ミーリ王女殿下を地下牢に閉じ込めているのですか!?」
「それも兄上の命令だ。私は関係ない」
「今すぐ陛下の部屋にいると思われるジャルパルを捕らえ、ミーリ王女殿下を救出せよ!」
多分警備兵のボスかな。ボスが警備兵に命じると、一斉に動き出した。
「陛下、ご覚悟はよろしいでしょうか?」
「く……。私を地下牢へ追いやるつもりか」
「囚人の援護、及び罪のない者の監禁は重罪です。むしろ罪のない者を監禁したら重罪と新たな法律を作ったのは誰でもないバルメル陛下自身なのですが……」
「兄上を重罪にする必要があったからだ……。まさか私自らこのようなことになるとは……」
観念したのか、ロープで両手首を縛られるバルメル国王。
先ほどのような刺々しい雰囲気はなく、私に顔を向けてきた。
「フラフレが地下牢にいたときに本来の力を発揮していればこのようなことにはならなかったのだぞ。どう責任をとる?」
「え?」
「兄上に続き、私をハメおって」
なぜか私のせいにされてしまった。
しかも、バルメルはこんな状況なのに勝ち誇ったかのような顔を浮かべた。
「こうなってしまった以上、ミーリに権力が移るだろう。だがミーリはなんだかんだで私のことを愛してくれている。ミーリが法律を変え、釈放命令を下せば、私も再び国王に戻ることになるであろう。最高権力者の権限は絶対的なのだからな。再び私が支配するときは、リバーサイド王国の者どももそこの娼館女も覚悟しておけ」
バルメルがとても一生懸命になっていることだけは伝わった。
ずっと勘違いでいるのも可愛そうだし、ここは心を鬼にして真実を告げようと思う。
私も勇気を出そう。
「あ、いえ。ミーリはそうは言っていませんでしたよ〜?」
「まだ盾突くか!?」
興奮気味のバルメル。
なぜかアクアとフォルスト様がマズいといった顔を浮かべている。
「えぇと、バルメルさんを好きなのは好きだけど、権力には興味ないって。あと一度くらいは地下牢で反省してほしいとも言っていましたよ? だから多分助けてはくれないと思いますよ」
「ほう、私を愛しているのに反省? フラフレになにがわかるというのだ?」
フォルスト様とアクアは、『私にこれ以上喋っちゃだめ』と顔で訴えているような雰囲気だった。
だが、これに関しては教えておいた方が良い気がする。
せっかくミーリだけはバルメルのことを家族だと思っているようだし、しっかりとミーリの気持ちもわかってあげてほしい。
ミーリの友達として。
「ミーリは悩んでいたんですよ。確証はないけれど、お父様は陰で若い貴族夫人や令嬢と二人っきりの時間が多いって。しかも権力がない人たちばかりだと」
「よ……よせ!」
「でも権力がないからお仕事与えて金貨を渡していたんですよね。ミーリの話を聞いて私はそう思っていましたよ」
「…………」
ミーリは悩んでいた。
だが、なにかをしてもらって金貨を渡して裕福にさせようとするバルメル。
しっかりと良いところもあるじゃないか。
だから私はサポートもしなければ。
しかし、バルメルは無表情のまま固まっている。フォルスト様もアクアも固まっている。
ジャルパルのときと同じだったかもしれない。私がうかつに敵側をフォローしてしまうなんて。
どうしよう……。ひとまずフォルスト様に謝らないと。
「フォルスト様……申し訳ありません。私、ミーリの気持ちをしっかり伝えたかったのですが……」
「い、いや、もうわかったから、これ以上はなにも言わないであげてくれ」
「はぁ……。フラフレ様の、無知ゆえに遠慮のない、恐ろしいまでの暴露二度目ですね。またしても鳥肌がたちました」
いやいや、今回は暴露ではない。なぜならバルメルは悪いことをしていたわけではないのだから。ジャルパルの時みたいなしょーかんとは違う。
「陛下。今の話は本当ですか!?」
「権力者だからと言って大勢の人間を寝取ったのですか!?」
「しかも相手は子や夫人……。本当であれば、ジャルパル元国王よりも重罪ですぞ!」
滝のように汗をかいているバルメル。
身体もガタガタと震えているようだ。
……え、どうして?





