119話 フラフレは再びハーベスト王国へ
とんでもなく更新遅れてしまいました。
待ってくださっていた読者様方申し訳ございません!!!!
128話まで執筆済みですので、ゆっくりと更新再開していきます。
「もうじきハーベスト王国だ。改めて今回の作戦の最終確認をしたいと思う」
フォルスト様が普段より真剣な表情だ。
この馬車に乗っている私とウェルマーとアクアは、フォルスト様に顔を向ける。
リバーサイド王国を出発して数日。
昨日まではフォルスト様と二人きりで馬車旅行気分が多少あったものの、まもなく到着となるとそうはいかない。
「えっと……、私はフォルスト様とアクアと一緒に、バルメル陛下との謁見に参加するんですよね」
「あぁ。この謁見でバルメル国王の失態を暴く。ウェルマーたちには持ち前の技量を活かしてもらい、例の人物の確保を。可能ならばジャルパルも同時に」
「はい。ジャルパルが王宮内にいれば良いのですが。それにしても……」
変装しているウェルマーが馬車内から外を眺めている。
私も外を見渡してみた。
「ここまでの大雨も珍しいですね」
「私はまだ祈らなくて良いのですか? 馬さんたちが大変そうだなぁって……」
「フラフレは動物に対しても優しいのだな」
フォルスト様が微笑んでくる。
これから大事な時間が始まるのに、いたずらに私の心臓はドキドキしてしまう。
「この馬たちは皆、毎日雨の中頑張ってくれていた。どちらかというとぬかるみがある方が得意なのだよ」
「ああ、なるほど。どろんこ遊びでもどろの質によってふかふか感が違いますもんね。馬さんたちにも好みがあるのですね」
「う……うむ……」
どうしてみんな苦笑いなのだろう。
フォルスト様がこほんと咳払いをして、作戦会議が始まった。
「このあとフォルスト陛下が謁見を望まれると申し出た時点で、ジャルパル元国王が聞いていた場合……。おそらくフラフレ様も同行していると推測するでしょう。どのような卑劣な策を練るかは想像がつきません。くれぐれも油断なく」
真剣になっている本気のウェルマーだ。
今まで見たこともない表情で、とっても恐い。
「フォルスト様とアクアから離れないようにします!」
ジャルパルが脱獄している以上、私たちに復讐してくる可能性が非常に高いとフォルスト様が言っていた。
ちょっと恐いけれど、ガッチリとアクアとフォルスト様に守られているし、きっと大丈夫!
私はフォルスト様たちに恥をかかせないように、謁見でしっかりとした発言を心がけるように集中しよう。
などと考えているうちに、王都へ入るための検問所に到着した。
どうやら、しばらくここで待つことになるらしい。
あれ、ウェルマーがいつのまにかいなくなっている。
全く気がつかなかったなぁ……。
♢
謁見の許可をもらうまでしばらく検問所で待機。
しばらく待っていると……。
「大変お待たせして申しわけございません。バルメル陛下の承諾が下りたため、これより王宮へご案内いたします」
「うむ。突然の来訪にもかかわらず対応してくれたこと感謝する」
再び馬車が動き出す。
あ、この場所は……。
「ん? なにか思い出があるのかい? って、ここは……」
「私が十歳のころでしたね。ジャルパルに連れられて来たことがあります」
「なんと卑劣な……!!」
「え、で、でも……」
アクアがおっかない顔をする。
フォルスト様もなにかに呆れているようだ。
「フラフレが指差した所がどのような場所か知っているのか?」
「いえ、全く。ただ、私がここに放り込まれそうになったとき、中にいた綺麗なお姉さんたちがとっても優しくしてくれた記憶があります」
「フラフレ様、これ以上は……」
「うん。でも『まだ早いし無垢なあなたは働いてはいけません』って言われてそれっきりなんだ」
地下牢生活も永遠と閉じ込められていたわけではなかった。
ジャルパルが私を連れだしてくれた店。私に対しても唯一優しくしてくれたから印象に残っている。ただ、どのような店かは、当時よくわかっていなかった。
「もしもミーリを助け出して全部ことが済んだら、行ってみたいなぁ」
アクアとフォルスト様がとっても困った表情をしていた。
もしかしたらとっても高い料金をとられてしまう高級なお店なのかもしれない……。
「あ、あわあわ……な、なんでもありませんっ! ただ当時のお姉さんがいたらお礼の挨拶したいなって……」
「ん……。わかった。だが、それだけならばもしかしたらここに行かずとも叶うかもしれん」
「え、それはどういうことです?」
「すまない、今はまだ言えないのだ」
あ、そっか。大事な用事を全部無事に終わらせることに集中しなきゃだ。
つい昔の良かった記憶が蘇って浮かれてしまった。
「すみませんでした」
「いや、謝ることではないよ。むしろ、信憑性が増したというものだ」
「はい?」
しばらくなぜか無言が続く。
あっという間に馬車は王宮に到着した。
そうわかったとたん、私の身体が勝手に震え出す。
しかし……。
「大丈夫だ」
「は、はい」
フォルスト様が私の手をギュッと握ってくれた。
不思議なもので、それだけで震えが徐々におさまっていく。
「無理もない。それだけ恐かった場所なのだから……」
「お気遣いありがとうございます……でも、大丈夫、です!」
「落ち着いたら外へ出よう」
「は、はい」
外へ出たら、フォルスト様の側にいる者としての立場でしっかりしておかなきゃ。
一度深呼吸して、心の準備を整えた。
「大丈夫です!」
「よし、では行こう」
いよいよ……、他国での謁見か。
緊張してきた。
どろんこ聖女のコミカライズ4巻が発売されました。
こちらも是非よろしくお願いいたします!
前書きで128話まで執筆済みと書いてありますが、このお話はまだまだ続きます。
あのキャラがざまあされるまでは終わりませんので、どうぞよろしくお願いいたします。