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115話 フラフレは前向きさを取り戻す

 体調不良で休養していたため、二日ほどなにもしなかった。

 自分の部屋でしっかりと休養をとっているのに、なかなか回復しない。

 大事な時期なのに……。


「おやおや、ずいぶんとお疲れのようだねぇ」

「あ、ミラーシャさん!」

「久しぶりだねぇ。それにしてもこの金貨はなんなのだい?」


 ミラーシャさんが私の部屋に入ってきて、飾っている金貨に注目していた。

 ふふっと笑い、すぐに私が寝ているベッドのそばまで来てくれて、顔に手をあててきた。


「アクアちゃんに相談されて、来てみたのさ。体調不良が治らないって聞いて、もしかしたら聖女特有の病気かと思ってね」

「聖女特有の病気? 治るんですか?」


 王宮直属主治医のプスっとさされてもなかなか治らない。

 昨日くらいから私はそのことでも心配になっているため、すぐに聞いてしまった。


「フラフレちゃん、最近なにか悩みごとがあるのでしょう?」

「あります……。友達が大変な目に遭っているかもしれないし、この病気が治るのかどうかとか……」

「フラフレちゃんは他人のことになると心配性になることがあるからねぇ。それが気になりすぎてしまって聖なる力がコントロールできなくなっているんだよ」

「え?」


「まぁフラフレちゃんは元々が規格外の力を持っているから、今までは気がつかなかったのだろうね。聖なる力は精神面でも大きく左右されるんだよ。悩みごとが多いときに祈って一気に力を消費しちゃったんだろうねぇ」

「だからハーベスト王国にいたときのような身体の怠さがあるのかぁ……」

「フラフレちゃんがリバーサイド王国に来てからは、楽しいことばっかりだったんだろうねぇ。それにフラフレちゃんの元の力が合わさればあのとんでもない力も納得できるってもんさ」


 リバーサイド王国で目を覚ましてからのことを、ふと思い出した。


 意識が戻った瞬間、プスっとさされていて痛い思いをしたっけ。

 フォルスト様と王宮直属主治医が私のことをとっても心配してくれて、元気にしてくれた。


 アクアが私の面倒見役になってくれて、一緒にいてとっても楽しかったし嬉しかった。


 外でどろんこあそびを毎日やらせてもらったり、日課でやっていた祈りもなんとなく楽しい感じになっていったり、嫌なことなんてなにひとつなかった。

 最近だと孤児院の仲間と再会したり、ハーベスト王国のミーリと仲良くなれたり、話せる仲間が増えた。


「私、リバーサイド王国のみんなにずっと良くみてくれていたんだなって……。元気にならなきゃ!」


 無理やりベッドから起き上がろうとしたが、やはり怠さでうまく起き上がることができない。

 ミラーシャさんに支えられるような体勢になってしまった。


「あんまり無茶をしちゃあいけないよ」

「どうしたら治るかわかりますか?」

「心配ごとをなくして、精神面を安定させることだね」


 つまり、ミーリのことを心配しすぎないようにするってことかな。

 うーん……。すごく難しい気がする。

 なにしろミーリが今、私が閉じ込められていた地下牢にいるかもしれないのだから。

 当時の苦しさをミーリも体験していると考えるだけでも心配になってしまう。


 けれど、もうまもなく諜報員からの報告もくる。

 肝心な時に動けないんじゃダメじゃん!


 ミラーシャさんの助言を聞いて、ようやく割り切るしかない。とても薄情な気もするけれど。


 と考えたけれど、現実は……。


「うぅ……むずかしい……」

「それだけフラフレちゃんの友達を大事に想っているんだよ」

「はいっ。とっても大好きで大事なんです。だからどうしても心配で……」


 まだミーリが地下牢にいると決まったわけではない。だがフォルスト様の予感も加わっているため油断できない。


 口下手だけれど、ミラーシャさんにも私が地下牢でどのような生活をしていたか、ハーベスト王国のミーリ王女のことも話した。

 ミラーシャさんは私の頭を撫でてからそっと抱きしめてくれた。


「フラフレちゃんは、さぞ辛かったのだろうね……。だからこそそれだけ心配しているのでしょう」

「今だからわかるんです。ごはんもほとんどなし、日の光にも浴びることができずに無理に聖なる力を使っていたら、ミーリが死んじゃうんじゃないかって……」

「きっと大丈夫。アタシはそう思うわ」

「え?」

「今はそう信じるのよ。だって、フラフレちゃんの周りにはとっても心強い仲間たちがいるのだから。なによりも、あなたを助けた国王陛下を信じるのよ」


 ミラーシャさんの両手が私の手を包み、まるで守ってくれているかのようだ。

 廃棄処分されて荒野に捨てられたとき、絶望しかなかった。

 目を閉じたときは、もう二度と開くことはないとすら思ったくらいの絶望感。

 しかし、フォルスト様が助けてくれた。


 だって、私がお兄ちゃんと呼んでいたとっても頼れる男なのだから!

 うん!

 今度こそ自信がついてきた。


 私が悩んで心配していてもどうすることもできないし、頼れる仲間に頼って頼って頼りまくる。

 そう心の底から決心した。

 すると……。


「あれれ……?」


 身体の怠さはどこへいったのやら。

 いつもどおりの元気な私に戻っていた。

 いや、それどころか今までよりも元気が有り余っているような気にすらなってしまっている。


「どうやら、悩みが解決できたようだね」

「心配していることに変わりはないんですけれど、助けたあとのことを考えるようにしたら急に元気になってきて、やる気もみなぎってきました」

「それでこそフラフレちゃんだわ」


 よーし。私が野菜を収穫したものをミーリに届けよう。いっぱいいっぱいおいしくなるように祈って、とっておきの野菜にしてみせるんだから!

 あと、ミーリは花が大好きだから、花束でも作ってみようかなぁ。


「ミラーシャさんっ、助けてくれてありがとうございます!」

「ふふ、アタしゃなんもしていないよ。フラフレちゃんがいつも前向きだから一瞬で回復できたのさ」


 ミラーシャさんのアドバイスがなかったらこうはならなかったと思う。

 もう一度お礼を言って、部屋を出ようとした。

 そうしたら、部屋の外で待機していたアクアに止められた。


「フラフレ様、元気になられたようで良かったです」

「うん、ミラーシャさんのおかげだよ。聖女特有の病気だったみたい」

「それはそれは……。ミラーシャ様には感謝ですね。ところで……」


 アクアが私の服装を見て残念そうな表情をしている。

 あ、パジャマのままだった……。しかも、ずっと寝ていたからか下着もさらけだしているだらしない状態だった。


 アクアに着替えを手伝ってもらったのだが、なぜか正装な格好。

 どろんこあそびもできる状態になったのだけれど。

 これってゼッケン……じゃなくて謁見の時の格好だよね。


「フラフレ様。本日のどろんこあそびは中止とし、大至急緊急会議を開きます」

「もしかして……」

「諜報員が戻られ報告を受け終わったところです」


 元気になったあとで助かった。

 私は緊張感をもって玉座の間へ向かう。

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追放聖女のどろんこ農園生活 ~いつのまにか隣国を救ってしまいました~
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