113話 フラフレはモナカと仲良くなる
どろんこを落とすためにモナカと一緒に入浴した。
お風呂も一緒に楽しんだし、モナカとどろんこあそび友達になれた気がする。
口数も少なめで一見大人しそうなモナカだが、どろんこあそびとお風呂ではとても楽しそうで、笑顔を絶やさなかった。
キャッキャキャッキャと二人で水鉄砲ごっこをやったり、お風呂ダイブをしたり。
「こらっ! 騒ぎすぎはいけませんよ」
アクアに注意された。
さすがにはしゃぎすぎたかな。
湯船に静かに浸かる。
するとモナカが私に近づいてきてほぼ密着状態になった。
「……こんなに楽しんだの、生まれて初めてです」
「一緒に遊べて楽しかったよ、ありがとう」
「……聖女様のこと、もっと早く知りたかった。そうしたらハーベスト王国で仲良くなれていたかもしれないのに」
「これから仲良くしようよ。改めてよろしくね」
「……はい。ちょっとだけで良いので、なぐさめてほしい……」
「へ?」
モナカがさらに密着してきて、ぎゅっと抱きついてきた。
柔らかい素肌があたっている。
モナカの身体はどことなく震えているようだ。
「……もう両親には顔向けできない」
「え?」
「私、貴族の嗜みやマナーがこれっぽっちもできていない。それでも唯一聖女という名目があったからなんとか家にいられた。でも、私の実力がどれくらいかわかった。廃棄処分されても仕方がない……」
とても悲しそうな顔をしながら、溜め込んでいた毒を吐くかのように語っている。
「聖女様のおかげで楽しいことを知れた。悔いはない」
貴族に関してはまだよくわからない。
私も将来的に王族になるわけだから、しっかりしなきゃとは思っているし、勉強中。
モナカがほんのりと涙を溢しているようだから、私は黙ってそばにいる。
それくらいしかできない。
「道具としてしか見られていないの?」
「……それがハーベスト王国における貴族の一般的な常識」
「うぅ……」
これもジャルパルの影響なのかな。
もう私は他国の人間だし、ハーベスト王国のことをどうこう言う資格はないのだけれど、モナカが幸せになって欲しいとは思っている。
「ごめんなさい。聞くつもりはなかったのですが……」
風呂場の外で待機していたアクアが、そう言いながら入ってきた。
「ハーベスト王国の貴族常識は知っております」
「……どうしてです?」
「遠い昔、私が幼少期の頃に散々近隣国の常識は習いましたからね……」
あぁ、アクアは元王女様だったから、いっぱい勉強していたんだろうなぁ。
「……ただでさえ貧乏貴族な家だから……。聖女活動の給金が支えになっていたくらい。その給金も止まった以上、私の存在価値がない」
「そうご両親から言われていたのですか?」
「……いえ、恐くて聞けない。でも周りの貴族を見ていたらそうだと思ってしまう」
あれ、だとしたら今まで言っていたモナカの発言って……。
「……使えないと言われた子はみんな廃棄処分されていた。そういう国ですから」
「もしもの時は、リバーサイド王国が、フォルスト国王陛下が助けてくれるでしょう。今後、ハーベスト王国の不遇を受けた子たちを支援サポートする動きも計画していますから」
アクアが人差し指を口にあてて黙っててねというポーズをとった。
「……リバーサイド王国って良い国」
「いえ、昔はそんなことありませんでしたよ……」
アクアが珍しく苦笑いを浮かべていた。
ということは、フォルスト様が国王になってから良い国になったということなのかな?
「……少し希望が見えてきた。でも、本当ならば私も聖女として天候を晴れさせて国を守れる人になりたい」
「うん。一緒にがんばろー」
「……聖女様もありがとう」
さすがに長湯してしまったため、脱衣所で身体を拭いて服を着る。
ハーベスト王国で生活している人たちも大変なんだなぁと思いながら、再びミーリのことを思い出す。
無事であってほしいな。
♢
そして翌日の朝……。
「うぐぅぅぅ……」
モナカとアクアが心配してくれる声が聞こえてくる。
私の身体は絶不調になってしまった。





