110話 フラフレは謁見に参加する(後編)
アクアが私のそばに来て、落ち着かせようとしてくれる。
しかし、私はミーリの気持ちを無駄にしたくはなかった。
「ミーリは言っていたんだよ。国へ帰ったら仲間の聖女たちと一緒に国を護っていきたいって。それに……ミーリはすっごく頑張ってここで猛特訓していたの。帰ってからあなたたちと一緒に祈れるってワクワクしていたんだよ。だから……あきらめちゃダメだよ!」
……はっ!
つい言いたいことを思いっきり言ってしまった……。
ここにいる全員ダンマリとしてしまったではないか。
すぐに謝ろうと思ったのだが……。
「確かに、フラフレの言う通りだ。ミーリ殿は覚悟を持ってここに来ていた。だからこそ私もすぐに彼女を受け入れたつもりだ」
「フォルスト様……」
「そなたらもここに来た本音としてはミーリ殿の安否が心配なことに加え、ミーリ殿と同じく、フラフレに教わりたいのではないのか?」
「……そ、それは……」
「わたくしたちは聖女様に対して……」
言い淀む二人。
「それに、ミーリ殿の件についても実のところすでに動いているのだよ」
「「「え?」」」
二人と一緒に私も声を出してしまった。
フォルスト様の顔色を伺ったが、安心して良いと言った雰囲気を漂わせている。
「そなたらが来る十日ほど前、とある来客があったのでな。少々心配だったのでハーベスト王国にこちらからも諜報員を送り出している」
「それってウェ……ぐうぇっ!?」
アクアが私の口を勢いよく押さえつけてきた。
ハーベスト王国からやってきたウェルマーのことかなと思って聞こうとしたのだけれど、これは彼女たちの前じゃ喋っちゃいけないやつだったのか……。
危なかった。
落ち着いて考えてみたら、まだマリとモナカを受け入れているわけじゃなかったんだった。
簡単にこちらの国の事情などを喋っちゃいけないってことか。
うっかり口を滑らせてしまいそうになってごめんなさい。気をつけます。
アクアに目でそう訴えたらニコリと微笑んで手を離してくれた。
「こほん、本来は貴国の王らに対しての調査を極秘に進めるつもりだったのだが。仮にバルメル新国王がミーリ殿と接触しているならば、その情報もいずれ入ってくるはずだ」
フォルスト様が自信を持って言っている。
「それに、ミーリ殿が仮に監禁されていたとしても、おそらくは無事……とそんな予感はしている」
「ほっ……」
私がホッとひと安心すると、マリとモナカが不思議そうな表情をしていた。
「ミーリ様が無事であるとして、
「どちらにせよ、情報が入ってくるまではあと数日はかかる。そなたらはどうする?」
またしても言い淀む二人。
視線がチラチラと私に向けられていることに気がついた。
「ミーリと同じようなことする?」
「……し、しかし。私たちは聖女様に対して今までどれだけのことを――」
「良いから良いから。これからは聖女同士、仲良くしようよ」
一緒にどろんこあそびができる友達ができたら嬉しいという想いもある。
もちろん、マリとモナカが聖女として活躍できたらミーリも報われるという願いもあるけれど。
戸惑いながらも二人は再び私に対して頭を下げてきた。
「……是非、ご教授ください聖女様!」
「お願いいたしますわ」
マリとモナカとも仲良くなれそうな気がした。
もちろんミーリのことも心配だが、ずっと心配だけしていても私はどうすることもできない。
しかしフォルスト様の手筈のおかげでまもなくどうなっているのかがわかるはずだ。
ならば、今の私がするべきことはミーリの安否を祈りつつ、彼女が喜びそうなことをするに尽きると思った。
少し前だったらこんな考え方なんてできなかった。
けれども、フォルスト様やアクアから色々と教えてもらえたため、私のするべきことがなんとなくわかってきたような気がする。
そう思っていないとミーリのことが心配になりすぎて、なにも手がつけなくなってしまう気がしていたのだ。
無理やり前向きに考えて言ったことなのだが……。
「フラフレよ、毎度のことながら優しいな」
「へ?」
フォルスト様がフッと私に対してだけ笑みを溢してくれた。
「マリとモナカよ、そなたらが滞在する間は護衛も含め客人として丁重に迎え入れ王宮に滞在することを許可する」
「……そんなに至れり尽くせり?」
「わたくしたちがそこまでの待遇を……。良いのですか?」
「もちろんだ」
フォルスト様の方が私よりずっとずっと優しいと思う。
二人ともとても喜んでいるように見えた。
次回更新は10/18(金)です。





