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【書籍化】追放聖女のどろんこ農園生活 〜いつのまにか隣国を救ってしまいました〜  作者: よどら文鳥


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103話 【Side】ジャルパルたちの勘違い(24/07/08修正)

「ミーリ王女殿下。ご無礼をお許しください」

「ちょっと、離しなさいよ! 私は本当に聖なる力を……この国を……守るために、ふぐぅっ!」


 バルメルは、拘束されたミーリに対してキツい一撃をおみまいした。

 ミーリはその場で苦しくなり、痛みに耐えきれず意識を失ってしまう。


「ミーリをこのまま地下牢へ連れていけ」

「陛下、よろしいのですか……?」

「ああ、構わん。おまえらも聞いていたとおり、国の一大事だというのにミーリは呑気に趣味を楽しんでいた。王女としての自覚を持たせるためにも教育せねばなるまい……。しばらく反省という意味で地下牢生活だ」

「……かしこまりました。食事などは?」

「一日三食、服も湯あみもしっかりと与えよ。あくまで教育の一環として閉じ込めるだけなのだからな」

「ははっ、ではそのように」


 近衛兵たちはミーリを丁重に担いで連れていく。

 一人になったバルメルはホッとひといきついた。


「ふ……。ミーリにはがっかりさせられたが、兄上のリスクある暴走を安全にするために犠牲になってもらおう。ミーリにはすまないが、しばらくなにも知らないまま地下牢で待機していてくれ……。私のためにもだ」


 ジャルパルの作戦をまずは確実にするため、そしてバルメルの野望が成功するため、ミーリにはしばらくなにもしないでもらうのが得策だった。

 さらにジャルパルが隣の部屋にいることもバレるわけにはいかないのだ。


「私の策にミーリを監禁する必要などないと言っていたはずだが?」


 ミーリがいなくなったタイミングで、隣の部屋に待機していたジャルパルが姿を現した。

 ジャルパルはバルメル専用の椅子に断りもなく座り、楽な姿勢をとる。同時に、バルメルの余計な行動によって、ミーリが地下牢に放り込まれてしまったことを、ジャルパルは内心悩んでいた。


「偉そうに……」

「なにか?」

「いえ。まさかかつてフラフレを幽閉していたところへミーリを放り込むことになるとは心が痛みますゆえ」


 今のバルメルにとって、ジャルパルが邪魔で仕方がない。とはいえこうなってしまえばフラフレも必要になってくる。

 フラフレを奪還する作戦が成功したあと、ジャルパルになにかしらの汚名を被せて再び牢獄させようと企んでいた。

 そのためにミーリを利用し、わざと地下牢へ放り込むことにしたのだ。


「ミーリがフラフレと同じ地下牢……か。ミーリは聖なる力が強化されどうのこうのと言っておったな」

「いえ。ただの園芸を楽しんできただけだったようで。王女の立場として、このような環境の中、観光に行くのはなにごとだと叱責しました」

「楽しむ……か。バルメルよ、ミーリにひとつ命じるのだ」

「なにをですか?」

「食事はフラフレのとき同様、余ったパンや調理に使わなかった食材のカスを与え、地下牢で野菜を育てよ、と。ひとつ気になっていることがあるのでな」

「は?」


 バルメルは決して憎くて地下牢に放り込んだわけではない。

 囚人以上の仕打ちを与えるよう命じられたことに、さすがに我慢できずにギロリと睨んだ。


「私とてミーリのことは大事な姪っ子だと思っておる。だが、ひとつ聖女に関して気になっていたことがあるのだよ」

「まさか、フラフレのような扱いにすれば才能が開花するとでも?」

「その可能性もある。だが、それよりもフラフレはわずかな食事でも餓死することなかった。それは地下牢でこっそりと育てていた野菜を食べていたからだったのだよ」

「…………。一理ありますな。だがしかし……」

「甘えは捨てよ。聖女としての才能を開花させれば、フラフレに頼らずとも国ひとつ晴れさせることくらいできるはずだ」


 バルメルの狙いは、あくまでもミーリただ一人に手柄をたてさせ、邪魔な聖女を追放すること。

 そのためにはミーリがフラフレと同じ規模の聖なる力を使いこなせるのが一番だった。

 ジャルパルが長い期間フラフレの幽閉を管理していたからこそ、バルメルは彼の推測を信じてしまったのである。

 むしろバルメルにとって好都合すぎたのだ。


「ミーリには過酷なことかもしれませんが、将来のため……です。兄上の言うとおりにしましょう(これでミーリを投獄させたうえに苦しめた罪も兄上に全て被せることができる。おまけにミーリ一人で国を救えるかもしれぬ)」

「これでフラフレを連れ戻せば予備としても使える」

「いえ、ミーリ一人で十分でしょう」

「念のためだ。それに、フラフレをリバーサイド王国から引き離すことにより再びあの国は地獄と化す。そうなれば我が国に頼らざるを得なくなるだろう」

「兄上の悪知恵には敵いませんが、私はあの国に対してなにも求めておりませんが?」

「ふ……。これは私個人の目的だ。あくまで引き続き良い女と寝るためだ(綺麗なフラフレを意地でも抱かなくては。ミーリをリバーサイド王国に引き取ってもらえれば兄上も向こうに行き、我ら兄弟でふたつの国を支配できるだろう)」


 もちろん、ジャルパルの本当の狙いを話すことはなかった。


 しかし、ジャルパルもバルメルも知らなかった。

 ジャルパルのフラフレ奪還作戦は現在リバーサイド王国で困難な状況にあることを。


 さらに、ミーリを閉じ込めてしまったことにより、彼女がバルメルへ対する違和感や忠誠心も消えた。さらに、父親であるという認識すら薄れてしまい最も危険な敵になるのである。


 お互いに本心を打ち明けないことにより、双方に誤解が生まれ、窮地に追い込まれてしまうことをこのときの二人は知るすべもなかった。

次回は2月9日(金)更新予定です。

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追放聖女のどろんこ農園生活 ~いつのまにか隣国を救ってしまいました~
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