100話 フラフレはアクアのことを心配する
ついに100話目です。(なにかSSみたいにしようと思ったけれど前後の区切りが悪いので通常更新です笑)
作家を目指す前に書いていた小説(現在は消去)は200話以上書いていましたので、どろんこ聖女もそれくらい更新できたら良いなぁと思っています。
これからも応援よろしくお願いいたします。
「失礼しました。別に怪しいものではありませんよ」
「聖女に関して、現段階で民間人には極秘にしています。怪しさしかありませんが」
「それもそうですね。ですが、危害を加えるつもりはありませんので。それにしてもさすがは聖女様。私の正体をあっというまに見破っているのですね」
「はい?」
「聖女様はいたって冷静な対応。脱衣所ばかりに視線を向け、すぐにでも脱出できる策を考えていたのでしょう。さすが、噂どおりのお方です」
いや、そうではない。
大事なメダルのことが心配で心配で、いてもたってもいられなかっただけだ。
彼女の正体よりも私の大事なお宝が最優先!
ところで、彼女なにものなのだろう。
私はすぐに、『どちらさまですか?』と聞こうとしたが、アクアに止められた。
「彼女は我が国の誇りですから」
「え、えっ⁉︎」
「そうやって、聖女様はなにがなんだかわかっていないような仕草をして、私の油断を誘おうとするのですね……。素晴らしいです」
「い、いえ。そうじゃなく……ふぐっ! んがんが……」
私の自由な口は、アクアの両手で塞がれ奪われた。
「そのとおりです! 彼女は常に冷静……こほん、常に明るく振る舞い、どのような状況でも恐れることなく堂々としていますので」
アクアがやたらと私のことを煽ててくれている。名前で呼んでこないのは、彼女たちに私の名前がバレないようにするための配慮なのかもしれない。
いつも堂々としているのはアクアなのに。
女性はアクアの言葉にすっかりと騙されているようだ。
「さすが、主人に得体がしれない行動をするから油断するなと言われただけのことはありますね」
「「え?」」
「こう言えばわかるでしょう? ジャルパルに命じられて、私はこの国へ来ました」
「「は⁉︎」」
さっきからアクアと息ピッタリ。
……じゃなくて、これはもっと警戒したほうが良い?
急いで逃げたほうが良いのかも⁉︎
アクアの手を引っ張ろうとしたが、微動だにしなかった。
こっそりと私にだけ聞こえる程度の小声で話しかけてきた。
「大丈夫ですよ。相手も今はタオルのみのはず。武器を持っていない以上、私でもフラフレ様をお守りできますから」
「で、でも……」
「それに、危害を加えるつもりはないと言っていることは本当かもしれませんし、殺意も感じられません。ここでの会話は私にお任せください」
「う、うん。わかった」
「フラフレ様は私の発言に全て乗るように!」
「は、はい」
騙し合いみたいでいささか罪悪感があるが、ここはアクアの言うとおりにしよう。
「危害を加えるつもりがないのでしたら、一度肩まで浸かり、入浴しながら周りに聞こえないよう小声で対談しましょうか?」
「むしろありがたいです。この温浴施設は気持ち良いですし」
再び浴槽に浸かる。
気持ち良いし、緊張感もほぐれていく。
やはりアクアは腹痛が治らない中、頑張ってくれていたんだ!
そうでなければ、もう一度浸かるなんて提案はしなかっただろうし。
私はアクアが少しでも湯船に浸かっていられるように、なるべく会話を引き延ばせるように私も参戦しよう。
「ハーベスト王国の使いの者ということで間違いありませんね?」
「はい」
「それならば納得しました。どうして彼女を見ただけで聖女だと分かったのかも。いったいなにが目的でしょう?」
入浴している人たちは、ただの会話だと思っているようで注目されているわけではない。各々気持ちよさそうに浸かっているようだ。
私も話に参加したいのに難しい話ばかりでなかなか喋るきっかけがないため、諦めて入浴を満喫してしまっている。
「ジャルパルからは、聖女フラフレを可能ならば連れてこいと、無理なら情報を集めて奪還するためのヒントを掴んでこいと命じられています」
「え⁉︎」
「なるほど」
気持ちいい湯船に浸かっているからなのか、そんなに驚かなかった。
12/25、どろんこ聖女のコミカライズ発売です!
書店に行く用事がありましたら、並んでいるところだけでもぜひ見てくださいませ。





