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10話 フラフレは大きな水溜りに驚く

「なっ? なっ!? なーーっ!」


 大浴場へ立ち入ったことなど今まで一度もない。

 大浴場とは身体を綺麗にする場所という認識だった。

 しかしいざ実物を見てみると、湯気が出ている大きな水溜りと見たこともない道具がズラリ。

 ちょっと湿気が強い。

 ここならば身体を拭き放題だ。


「驚かれているようですが、このような場所は初めてですか?」

「はい、ここならば身体を拭いた上に服も綺麗になりそうですね!」

「……服ごと入浴されるおつもりですか?」

「にゅーよく?」

「あぁ、理解しました。まずはそこからですね」


 アクアさんから、大浴場での入浴の仕方とやるべきことを教わる。

 今まで、髪を洗うにしても、比較的綺麗な水が流れてきたときに頭ごと髪を突っ込んで洗い流すくらいしかできなかった。

 だがこの大浴場では常に綺麗なお湯が出るらしく、湯船というものに溜められた多量のお湯に全身浸かることすらできる。


(身体ごとお湯に包まれるってどんな感覚なんだろう~)


「服は脱いで裸で入るのですか?」

「貸切にしてありますから、覗かれる心配はございません。ご安心を」

「それは気にしていないです。別に私の身体なんて見たくないでしょう……」


 私は、ジャルパル陛下に身体の魅力などないと何度も言われ続けてきた。

 自分でもこんなガリガリで汚い女、結婚はおろか好きになってくれる人だっていないと思っている。


「そんな過小評価することはないと思いますけれど……。それから、私には敬語を使わないようにお願いいたします」

「どうしてですか?」


 敬語を使うなという命令は初めてだったため、思わず聞き返してしまった。

 今まではジャルパル陛下は当然としても、警備兵や食事を運んでくれた人間、全ての人に敬語を使わなければお仕置きが待っていたのだ。


「まず、主従関係というものがございます。現在私はフラフレ様のお世話係なので、立場的にも堂々とされたほうがよろしいかと。もう一つ、フラフレ様にはあまり気を遣わず心を楽にしていただきたいという私個人の意見でもあります」

「他人への会話で敬語なしは慣れてないのですが、使わないようにします。……使わないようにするね」

「ありがとうございます」


 言葉を崩すなんていつぶりだろうか。

 孤児院にいたころは一緒に育った友達と仲良く喋っていたような気はするけれど、もう遠い昔の話。

 そういえば孤児院にいたときは、みんなで身体を拭きあったりしていたっけ……。


「えぇと、アクアさん……じゃなくて、アクア? 入浴って一緒に入れる?」

「へ?」

「ダメかな?」

「フラフレ様がお望みとあれば、そのくらいでしたら……」


 主従関係はしっかりしたほうが良いみたいだけれど、アクアと仲良くなるくらいなら別に構わないよね?

 私は、誰かと喋ること自体が嬉しくて仕方がなかった。

 だから、一緒にいてくれるならやることを共有したい。


 脱衣所というところで、私はなにも考えずに服を全て脱ぎ、裸になった。

 アクアもまた、メイド服を脱ぎ、綺麗な素肌をあらわにした。


「え!? フラフレ様……?」

「なにか?」


 アクアがあまりにも驚いた表情をしながら私の身体をジロジロと見てきた。

 ちょっと恥ずかしいかも。


「身体中にできたアザ……、どうされたのですか!?」

「あ……、本当だ。こんな感じになっちゃってたんだね」


 殴られること自体は日常的だったし、数箇所程度の怪我は気にしていなかった。

 しかし、聖なる力が使えなくなったときの暴行は激しかったからな……。

 まだ怪我が治っていなかったようだ。


「すぐに手当てを……」

「ちょっとズキズキしているけれど、大丈夫だよ」

「まさか、今まで日常的にそのような怪我を……?」

「うーん、今回はなかなか……かな」


 過去のことよりも、今は目の前にあるお風呂が気になっていて仕方がない。

 ここで今までのことを話すとややこしくなりそうだし、怪我のことは気にせずにアクアを連れて大浴場へと進んだ。

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