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滝ふたば 4

滝ふたばは、ひとまず、ケーキセットメニューのおかわりを要求した。


マスターは、ケーキを滝ふたばに出した。


マスターは渋い表情で滝ふたばを見守っていた。



「おいしそう!」


滝ふたばは、二個めのケーキをほおばった。そして、コーヒーをすすった。


「こんなおいしい、ケーキを出すお店に、ゾンビが出入りしているなんて信じられませんわ。第一、しらを切るのは大人げないですよ」


「私は、私にたてつくヤツ、うそつくヤツは容赦しないよ。マスターが持っているゾンビの情報、全部聞かせてもらいます」


滝ふたばの物言いには、なにか、そんな覚悟あるいは、気迫のようなもの、一言で言えば脅迫が確かに感じられた。


滝ふたばは、もともとは、短気なのは分かっているけどそれでも似つかわしくはないように思われた。


滝ふたばは、普段の彼女とは違っているのが、マスターには、あとにまで印象に残った。


「滝ふたばさん、ゾンビのことで何か知らなければ彼女の身や彼女の立場に困ったことが起こるのでしょうか。追い詰められた滝ふたばさんを見るのは初めてで、心配になります」


マスターの心を不吉な予感がよぎった。


しかし、マスターは表面は、とぼけた態度は崩さなかった。マスターの方にもお人好しではいられない事情があった。


マスターは、言った。


「それは、初耳ですね。うちは、ゾンビお断りとか言う店ではありませんが、それでも、ゾンビのお客さんはまだいらしてませんが……」


「……。でも、ゾンビに知り合いがいらっしゃるんでしょ」


「だれか、そんなことを言っていましたか」


「もう一度、警告します。私たち、素人の人間は、何とでも言ってだまし通せるでしょうが、その筋の人間の人たちは、あなたたちがやっていることは、すべてお見通しなんですよ。分かりますか」


それでも、マスターはしらを切った。


「つまり、ゾンビを呼び出すとか言う霊媒師とかにその話をお聞きになったとか」


マスターは、混ぜ返した。


「霊媒師って、あいつのこと? シンメトリックとかいう……それは絶対にありません。あの人とは縁を切ったのですから」


「自分のお父さんのことを、あなたの恩師である人物を、そんなに呼び捨てにして平気なんんですか」


「……」


確かに、滝ふたばと、シンメトリックとは、この二十年近く絶縁状態のままの状態だった。


マスターは、滝ふたばと、シンメトリックとのこんなことになるとは思ってもみなかったことだ。


マスターにとっては、悲しいことであった。



「わたしを子供あつかいにして、逃げるつもりね」


滝ふたばは、ゾンビについて、自分の納得する情報が得られない限り、滝ふたばは、引き下がることはなかっただろう。


コーヒーパーラー「ライフ」のマスターは、それは分かっていても、滝ふたばに対して最後の抵抗を試みた。


「ゾンビの騒動なんて、滅多にありませんし、この世で毎日生じていている死者の数に比べれば、ゾンビなんてなきに等しいのです。広大無辺の現実の世界で起こるささやかな誤差に含まれてしまうようなほんの数例の問題なのです」


滝ふたばは、もちろん、納得しない。


「つまり、あなたが言いたいのは、ゾンビはあくまでも偶然の出来事だと言うことですね。そして、それはあなたやこの店とは無関係ということなのですね」


ここで、滝ふたばは、核心を突いた。


「ある風が吹けば、そして、ある環境が整えば、大気の中にある死者の魂は、ゾンビとして地上に舞い戻るそうですね。世間のある種のひとは、そう考えているようですね。でも、その魂は、水の流れの泡のようなもので、生まれたと思えば次の瞬間には消えてしまっていう。本来死とは、そんなものなのですよね。そんな内容の論文が、うちに残されていたのです。論文の筆者は、うちの父、シンメトリック、そして、もうひとりの筆者が、ジョー・スミス・竹下、つまり、コーヒーパーラー『ライフ』のマスター、あなたでは、ありませんか?」


滝ふたばは、間を置かず、さらに第二段のとどめを刺した。


「そんな泡沫あわのようなものを現実の物として、この世に固定できる力を持つクスリがあるそうですね。ビタミンCとか言いましたよね」



マスターは、とどめを刺されたが、研究者としての心は生きていた。


「ビタミンCではありません。それは、ベータミンCというものです。それは、Beta-minCと表記します。ベーター試験中のクスリでCタイプのクスリという意味です」


滝ふたばは、少しばかり揚げ足を取られたとしてもまったく動じない。


「これくらいのことは、誰でも知っていることです。とうぜん、Beta-minDというのも存在します。そのつぎは、Beta-minEでしょう。シンメトリックは、こういう風に名前をつける習慣があるのです」


「わたしの揚げ足を取って、どんな意味があるのです」


滝ふたばは、間を置いた。


「……。やっぱりそうだ。私の間違いのビタミンCの指摘を出来るということは、マスターさんは、やはりゾンビや誰も知らないはずのクスリの関係と見られますよ」


滝ふたばは、無知を装ってマスターに罠をかけていたのである。


「……」


マスターが黙ると、滝ふたばが元気づいた。


「マスター、あなたは、しらを切るのがあまりお上手ではなさそうですね」


「ゾンビとの関係をかたくなに否定なさるのなら、それでも、かまいませんよ。わたくしとしては、いくつかの質問だけには答えてください。それだけでいいのです」


「わたしは、うちの庭のゾンビの死体の処分についても興味がありますし、この件でそして、もっと基本的なことについても、知りたいと思うようになったのです、例えば……」


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