滝ふたば 6
「ドレミヒーローが『セクシー』である」とは、どういう事か、滝ふたばは、なにを狙って、そんなことを聞きたがるのか。
滝ふたばの判断としては、「ドレミヒーローは『セクシー』ではない」という判断である。
しかし、それにしては、ドレミヒーローと関わる人たちは、「ドレミヒーローは『セクシー』ではない」と判断を下せない人が、滝ふたばの周りには、多いというか、多すぎるのだ、
ドレミヒーローは、実は、名ばかりのヒーローで、ドレミヒーローが出演するリアリティヒーロードラマには、やらせ疑惑がつきまとう。
しかし、ドレミヒーローが出演するヒーロードラマは、細々とではあるが、毎週一本が、制作され、それが放送されている。ドレミヒーローに関わるスタッフは、ドレミヒーローのおかげで、自分たちの家計をなんとか支えることができている。
これは、事実である。
ということは、世の中では、ドレミヒーローをホンモノのヒーローとして認めている人間がいるのだ!
滝ふたばには、これがどうにも納得の行かないことなのである。
ドレミヒーローを支持するものの中には、滝ふたばが責任者として関わる都のパワースーツ開発組織の人物が何人か存在している。
ドレミヒーローが出演する『なんちゃってヒーロー』という番組に登場するパワースーツや「ロボット司令」というドレミヒーローを補佐する相棒ロボットは、都のパワースーツ開発組織が『なんちゃってヒーロー』という番組に提供しているのである。
さらに、滝ふたばが聞くところによると、ドレミヒーローの周りでは、滝ふたばの父、シンメトリックが主催しているゾンビ研究組織からも「ベータミン C」という謎の薬物が密かに提供されているというのである。
都のパワースーツ開発組織とシンメトリックのゾンビ研究組織とは、人類の平和と正義を守る役割を任せてもらうために、互いに研究開発競争で、鎬を削る間柄であるのである。
競合するもの同士が、ドレミヒーローの味方をしているのである。
滝ふたばの心には、「誰もがドレミヒーローの味方になろうとしている」という納得の行かない気持ちが大きく育ちつつある。
滝ふたばは、実際に『なんちゃってヒーロー』というヒーロードラマの番組を知らないわけではない。滝ふたばの考えによると、『なんちゃってヒーロー』のドレミヒーローは、冷静に考えてみれば、あらゆる点で「セクシー」ではありえない。
ドレミヒーローは、ドレミヒーローの変身前の正体である「くず」のハロルド洸一そのものなのである。
「ハロルド洸一は、変身してドレミヒーローになっても、所詮はくず! 皆は、『なんちゃってヒーロー』の番組に登場するバビル文書やバビル伝説を真に受けすぎているのよ」
これが滝ふたばの考えであり、ドレミヒーローに関する世間の考え違いを正すために、滝ふたばは立ち上がり、行動に打って出たのである。