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「お前は、盗賊団の頭、バン!」
「ふはは。また会ったな少年よ!」
客席から盗賊団のメンバーがぞくぞくと現れ、会場はパニックとなった。
こいつら、混乱に乗じて逃げるつもりだ。
だが、百万Gを渡すわけにはいかない。
「待て! その金を置いていけ!」
「くっくっく。また痛い目に遭いたいようだな!」
バンは俺と距離をとり、手から炎を放つ。
「お前の”金縛り”のスキルはたいしたものだが、近づかなければ恐れるに足りん!」
相手の炎攻撃は遠距離を得意としている。
一方で、俺の金縛りは半径五メートル以内でないと効果を発揮しない。
距離をとって戦われると、こちらが不利だ。
「隙あり!!」
俺がバンに気を取られていると、盗賊団のメンバーが斬りかかってくる。
「くっ! 三秒金縛り!」
相手の動きを止める。
だが、それが相手の狙いだった。
「お頭! 今です!」
「でかした!」
スキルを発動した直後にバンが斬りかかってくる。
スキルのクールタイムをついた攻撃だ。
くそ!
こいつら戦い慣れているな!
……だが、俺のスキルは『連続使用二回』という設定だ。
こいつらはそのことを知らない!
「三秒金縛り!」
斬りかかってきたバンを金縛りにする。
動けなくなっている隙に、金を取り戻す。
バンが憤慨する。
「おのれ! 金を返せ!」
「ふざけるな! お前の金じゃないだろ!」
ガァン! ガァン!
互いの剣が激しくぶつかり合う。
よし! 剣術なら俺のほうが上のようだ!
こっちは札束の入った袋を持っているし、至近距離過ぎてバンは炎の魔法を使えない!
「くっ! なかなかやるようだな! 小僧のくせに!」
「観念しろ! 大人しく捕まれ!」
俺は戦いを優勢に進める。
しかし、俺の剣は剣術大会用の木剣、バンの剣は鉄製。
だんだんと、剣の勢いに押されていってしまう。
「ぐぐ……! 剣がバラバラになりそうだ!」
「ふはは! 焦らせやがって! 口ほどにもないわ! それ!」
俺の剣が弾かれ、手から離れる。
「終わりだ! 小僧!」
バンが剣を振り上げる。
くそっ!
スキルのクールタイムがまだ……!
「レイス! あぶない!」
「なっ!?」
バンに斬られる寸前、ソフィアが飛び込んできて俺の盾となる。
背中を斬られ、赤い鮮血が宙を舞う。
「そんな……!」
まるで、時間の流れが遅くなったかのように、ソフィアはそのままゆっくりと崩れ落ちた。
「ソフィア!」
体を抱き起す。
なんてことだ。
どうして、ソフィアが俺の盾に……。
「レイス、に、逃げて……」