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翌日、剣術大会に出場するため、広場へ向かった。
広場はコロシアムのように改造されていて、戦うためのリングのほかに客席や出店がある。
まるでお祭り騒ぎ。
なんでも、各地の剣豪たちが一堂に会するらしい。
「頑張ってね! レイス!」
「ああ、優勝賞金はいただきだ!」
俺とソフィアが意気込んでいると、後ろから声を掛けられる。
「あれ? レイスじゃないか」
「ウ、ウィリアム! それに、ミアまで……」
そこには、俺の兄であるウィリアムと、元婚約者のミアがいた。
ウィリアムが意地の悪い笑みを浮かべて挑発してくる。
「おいおい。まさか、お前も剣術大会に出場するのか?」
「そうだ。悪いか?」
「ぷっ。俺よりも弱いお前がか? あははは。こりゃあ、この大会もたいしたことないな」
ウィリアムが高笑いをすると、後ろでミアも失笑する。
その様子を見てソフィアが憤慨した。
「なによ。あんたなんか、私のレイスがけちょんけちょんにするんだからね!」
「ああ?……ん、んな! なんだこの美少女は!」
ウィリアムがソフィアを見て目を剝く。
「お、おおおお、お前ら! 一体どういう関係だ!?」
「どうって? ああ、レイスは私の婚約者よ? なにか問題でも?」
えええええ。
そんな話しましたっけ?
「な、なにぃ!? こんな美人がレイスの婚約者!? 本当なのか、レイス!!」
「え? ああ、まあ、そうみたいだな」
「お、お前、ミアと破談になった途端にもっといい女に乗り換えたのか!? この浮気者!!」
いやいや、どの口が言うんだ。
お前らが勝手に俺を捨てたんだろ。
ウィリアムの発言にミアが嫌な顔をする。
「ウィリアムさん。もっといい女ってどういうことですか?」
「え? ああ、その、言葉のあやだよ」
まあ、当然の評価だよな。
ミアの見た目は、まあ悪くはない。だけど、顔は普通で、体は胴長寸胴のお子様体形だ。
着飾っているからマシに見えるが、女の子としては中の下ってところだ。
俺が好きだったのは、彼女の優しい純朴な性格だったのだが、今となってはそれも嘘とわかっている。
一方のソフィアは、小顔で背が高く、足も長い。
整った顔に、長いまつ毛、漂い出る女性としての香りは男を狂わせる。
ウィリアムはミアとソフィアを見比べ、悔しそうに歯噛みしている。
こらこら、そんなあからさまに悔しがるなよ。
ミアが般若のような顔になってるぞ。
これ以上は喧嘩になる。ここらで引き揚げたほうがよさそうだ。
「じゃあな、ウィリアム、ミア、お互い頑張ろう」
「ちょ、調子に乗るなよ! お前と戦うことになったら、容赦しないからな!」
そう言って、ウィリアムはミアを引き連れて去っていった。
さてさて、どうなることやら。