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奴隷商館をおじさんと一緒に出る。
ついて来いというので、その通りにする。
う~ん。
奴隷ってどんなことするんだろう?
荷物持ちとか?
このおじさん、ガチムチ系だし、やっぱり夜のお勤めさせられるんだろうな。
ああ、初体験はせめて同年代の女の子がよかったよ。
おじさんは人気のない路地に入っていく。
ま、まさか、いきなり野外プレイ!?
まだ昼だぞ? 正気か?
「では、あらためて挨拶するわね。私の名前はソフィア。あなたはレイスでいいのね?」
「え? あ、はい。おじさんの名前、ソフィアっていうの?」
「ああ、しまった。また変身解くの忘れてた」
そう言うと、指をパチリとならし、姿を変化させる。
現れたのは銀髪の美少女だった。
「どう? 驚いた? 私のスキル”変身”よ。会ったことのある相手や物なら、なんにでもなれるわ」
「え! 女の人だったの!?」
ソフィアは俺よりもちょっとだけ年上のお姉さんだった。
それも流れるような長い銀髪が特徴的な超美人。
「なぜ変装を?」
「年齢制限があるから。私はまだ十六歳だから本当は奴隷は買えないの。だから姿を誤魔化してたのよ」
なるほど。
「ふふふ。よかったわね。私に買われて。いっぱい可愛がってあげるからね!」
よ、よかった。
こんな美人なお姉さんに買ってもらえるとは。
これは奴隷になって損どころか得をしてしまった。
「でも、困ったわねぇ……」
「え、なにが?」
「私、お金がないのよ。あなたを買ったことで、すっからかん。無一文よ」
「えええええ!? なんでそんな無計画な!」
「今日は買うつもりなかったんだけど、レイスがあんまりにも可愛かったから、つい……」
「じゃ、じゃあ、手持ちはゼロってことか……」
「手持ちっていうか、ちょっと借金しちゃった。三か月以内に返さないと、その、あなたを手放さなきゃならないの」
前言撤回。
やっぱり損だ。
◇ ◇ ◇
「ねえ、あなたは愛玩用に買ったんだから、戦わなくていいのよ?」
「なに言っているんだ。今夜の宿代くらいは稼がないと野宿だぞ!?」
俺とソフィアはゴブリンの洞窟の近くに来ていた。
ゴブリンを討伐すれば、冒険者ギルドからお金がもらえる。
手っ取り早く稼ぐならこれしかない。
「でも、私の”変身”は幻覚を見せるだけで、戦闘能力はないし……どうするの?」
「よくそれで冒険者やってたね……。俺に作戦があるから。まずはそこの岩に変身して」
「わかった」
ソフィアは岩に変身した。
俺はその陰に隠れて待機する。
「ねえ、こんなことして、どうするの?」
「しっ。静かに……。来たぞ」
ゴブリンが一匹やってくる。
どうやら、俺たちには気づいていない。
もっと近づいてくれ。もっとだ。
ゴブリンは結構強い。
だから正面から戦うのは得策ではない。
奇襲するのが一番いい。
ゴブリンが背中を向けた。
今だ!
俺はゴブリンの背中に斬りかかる。
「とおおおおお!」
「ぎゃぎゃ!」
「一秒金縛り!」
「ぎゃ!?」
ズバン!!
ゴブリンが倒れて動かなくなる。
金縛りをかけて動けなくなったところで、首を斬ってやった。
さすがに絶命したようだ。
「えっ! 倒したの!? すごい!」
「俺たちのスキル。案外相性がいいかもね。さあ、まだまだゴブリンを倒すぞ!」
俺たちはそのあともゴブリンを狩り続け、なんとか数日分の宿代を稼ぐことができた。