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 俺は奴隷商に売られた。

 今は檻の中にいる。

 周りには同じように檻に入れられた子どもたちがいる。


 これからどうなってしまうんだろう。

 想像を絶するようなひどいことをされてしまうのだろうか。


 俺は不安になって隣の檻に入っている女の子に話しかけた。

 俺よりちょっとだけ幼いであろう赤毛の子だ。


 「ねえ、ここに入って長いの? ここはどんなところ?」


 「……」


 「ねえ、ご飯とかちゃんと食べられてる?」


 「うるさいなぁ。話しかけないでくれる? 私とあんたはライバルなんだから」


 へ?

 ライバル?

 どういうことだ。


 「助かりたければ、必死でアピールすることね」


 「え……それってどういう?」


 「あとは自分で考えて。まあ、今から来る人たちの会話を聞いていれば、意味はわかるわよ」


 俺が女の子の言ったことの意味を考えていると、奴隷商のオーナーがやってきた。

 シルクハットにタキシードの太っちょのおじさんだ。


 「さあ、奴隷の子どもたちよ。新しいご主人様の候補がいらっしゃった。粗相のないようにな」


 オーナーの後ろから一人のおじさんが入ってくる。

 冒険者っぽい無骨な男性で、歴戦の勇者を思わせる。

 そして、そのおじさんが現れると同時に、奴隷の子どもたちがアピールを始める。


 「おじさん! 僕は力持ちだよ! 雇ってよ!」


 「おじちゃん! 私は料理が得意なの!」


 なんだ?

 みんなさっきまで黙ってたのに、急に騒ぎ出したぞ?


 「きゅ~ん。おじさま! 私を買って! きゅきゅ~ん」


 隣から媚びたような声が聞こえてくる。

 さっきの女の子だ。

 先ほどまでのやさぐれた態度ではない。

 まるで子猫のように愛くるしいアピールだ。


 おじさんは子どもたちのことを見て困惑している。


 「この子たちはなぜこんなに必死にアピールするんだ?」


 「ええ、ここで奴隷として買ってもらえなかった子どもは娼館に売られるか、強制労働施設送りですから。彼らも必死ですよ」


 「なるほど。胸が痛むな」


 なんだって!?

 じゃあ、選ばれなかったら大変じゃないか!


 俺はようやくさっき女の子が言っていた「ライバル」の意味を理解した。

 奴隷として買われることは不幸なことではないのだ。

 それよりも不幸なことは、娼館に売られたり、強制労働施設に送られること。

 

 こうしちゃいられない!

 俺もアピールせねば!


 「くぅ~ん。くぅ~ん。おじさん、お腹減ったよう、寒いよう……」


 コンセプトは『雨の日に捨てられた子犬(お腹がへっているver.)』だ。

 隣の女の子の演技に対抗するにはこれしかない。

 

 「ちょっと! 真似しないでよ!」


 「くぅ~ん。隣の女の子は元気だから買わなくていいよ。きっと強く生きていくさ~。くぅ~ん」


 「ちっ! ……きゅきゅ~ん! 隣の男の子は弱ってないわよ。ただの演技だから、私のほうを選んできゅ~ん」


 おじさんは俺と女の子のどちらにするかで悩んでいる。

 

 くそ! やっぱり、おじさんだから女の子のほうが好きなのか!?

 幼女好きは評判悪いぞ! 婚期逃すぞ!

 

 「くぅ~ん。くぅ~ん」


 「きゅきゅ~ん。きゅいい~ん」


 「くくぅ~~~ん! くぅくぅ~~~ん!」


 「きゅきゅきゅ~~~ん!! きゅきゅきゅ!!」


 俺と女の子のなりふり構わぬデッドヒートが続く。

 そして、おじさんはしばらく悩んだ末に結論を出した。


 「……う~ん。じゃあ、男の子のほうで」


 っしゃああああ!


 

 

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