3
俺は俊足を生かして街へ逃げ込んだ。
盗賊たちは怒号を上げながら追ってくる。
「てめぇ! 止まれ! 止まらねぇとぶっ殺すぞ!」
「じょ、冗談じゃない! 止まったってぶっ殺すつもりだろ!」
「殺さねえって! 半殺しにして金奪うだけだ!」
「ほとんど同じじゃないか!」
街の中を盗賊たちに追われながら爆走する。
すると、礼拝堂に続く急な坂道に差し掛かる。
ここには狭くて急な階段がある。
よし、ここなら応戦できるぞ!
「ほらほら、こっちだよ。捕まえてごらん!」
俺は盗賊たちを挑発した。
奴等は顔真っ赤にしている。
よしよし、作戦通りだ!
息が切れそうになるが、必死で階段を登る。
後ろから盗賊たちも階段を登ってくる。
今だ!
「くらえ! 一秒金縛り!」
追ってきていた一人の盗賊の動きが一秒間止まる。
俺はそいつの体にタックルして階段から突き落とすと、後ろから来ていたほかの盗賊たちも巻き込まれて階段から転げ落ちていく。
「やったぁ! ざまあみろ!」
なんだ、意外と使えるじゃん、このスキル!
盗賊たちは階段の下で伸びている。
このまま逃げ切れそうだ。
だが、そのとき、下の方で盗賊の頭のバンが叫んだ。
「逃がすか! くらえ! ファイアーボール!」
バンの掌から巨大な炎の弾が飛び出してくる。
俺はなんとか反応して躱したが、尻餅をついてしまった。
「し、しまった!」
まずいと思って起き上がったときには、すでに盗賊たちに囲まれていた。
金縛りは、一度に二回までしか使えない。
しかも、十秒間のクールタイムがある。
この状況から脱出することは不可能だ。
「へっへっへ。手こずらせやがって……」
俺は盗賊たちに捕まってしまった。
◇ ◇ ◇
「う……?」
目を覚ます。
殴られて気を失っていたんだ。
「へっへ。ボス、いいじゃないですか。やっちまいましょうよ。こいつ可愛い顔してますぜ」
「俺にそっちの趣味はないんだ。それとな、傷物にすると高く売れなくなる」
「ちぇっ。俺は階段から突き落とされてコブができたんだぜ?」
「このガキを奴隷商に売っぱらえば、かなりの金になる。それで少年でも少女でも買えばいいじゃねえか」
奴隷商だって?
まさか、俺のことを売るつもりなのか。
俺はなんとか逃げ出そうともがいたが、体に巻き付けられたロープはかなり頑丈だった。
ジタバタしていると、バンに気づかれた。
「おう、起きたか。大人しく金を渡しておけば奴隷になんてならなくて済んだのになぁ!」
「くそ! このロープほどけよ!」
「ははは。奴隷になるのが怖いか? せいぜい変態野郎に買われないことを祈れや。もし変態に買われたら、お前の初体験は女じゃなくて中年男の汚ねぇケツ穴になっちまうんだからな!」
「そ、そんな……」
こうして、俺は盗賊たちに攫われ、奴隷商に売られることになってしまった。