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わずかな路銀だけを持って家を出る。
「これからどうすればいいんだ」
とりあえず街に行くしかないか。
そこでどうにか仕事にありつくしかない。
川を覗き込む。
そこには金色の髪に、青い目をした自分の姿が映っている。
昨日まで、この男は名門アルバスノット家の次男、レイス・アルバスノットだった。
だが、今はちがう。
ただのレイスだ。
何の価値もないただのレイス。
さきほどあったことを思い出し、涙がでそうになる。
お父様。
スキルが低レベルだからって、なにも家を追い出すことはないじゃないか。親子としての情はないのか。
ウィリアム。
昔から嫌な奴だったが、俺の婚約者にあんなことをするとは。ただの外道じゃないか。
ミア。
俺のことだけを愛していると言ってくれていたのは、嘘だったのか? 嘘だったんだろうな。勝ち馬となったウィリアムの腰の上で嬉しそうに嬌声を上げていたあの姿こそが彼女の本性だったのだ。
「全部、まやかしだったんだ……」
水面を見つめながらこれまでのことを思い出す。
その思い出のすべてがガラガラと音を立てて崩れ去っていくようだ。
俺は水面に石を投げる。ぼちゃんと音がして俺の顔が崩れる。
「落ち込んでてもしょうがない。これまでのことは忘れて前を向こう。そういえば、今のステータスはどうなってたかな」
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レベル:5
体力20
魔力20
スキル:金縛り
<半径二メートル以内の対象を一秒間金縛りにする。連続使用二回。クールタイム十秒>
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「はあ、こんなスキルでどうやって身を立てて行けばいいんだよ……」
前向きになりかけていた心が、スキルの内容を見たことで、またしおれ始めてしまった。
◇ ◇ ◇
街に向かって歩く。
すると、向こうの方から馬車が近づいてきた。
馬車から人が降りてきて、話しかけてくる。
ずんぐりむっくりとした髭の生えた中年男だ。
「おい、坊主。一人か?」
「え? はあ、そうですが……」
「へっへっへ。俺は盗賊団の頭やってるバンってもんだ。殺されたくなきゃ金を置いて行きな」
いきなり盗賊団に出会ってしまった。
状況を理解した俺は脱兎の如く逃げ出す。
「おい! お前ら捕まえろ! 殺すなよ!」
馬車からさらに五人の男たちが出てくる。
「くそ! ついてない! いきなりピンチじゃないか!」
金をとられたら、生きていけない。
間違いなく飢え死にしてしまう。
このお金は絶対に死守しなければ!
俺は街のほうへと走る。
とにかく今は逃げて、街で誰かに助けを求めよう!
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