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俺は盗賊団を全員縄で縛り上げ、冒険者ギルドに差し出した。
奴等は賞金首だったので、報奨金がもらえた。
また、剣術大会の賞金も戻ってきた。
ウィリアムは最後までわあわあと喚いていたが、今は猿ぐつわをされて拘留されている。
今回起こした事件への関与で、逮捕されるらしい。
「ふぅ。やっと終わったな」
戦いの最後でバンが俺と勘違いしたのは、変身したソフィアだった。
ソフィアは俺が土煙を上げたことで作戦の意図を理解し、即座に俺に変身してバンの注意を引きつけてくれたのだ。
「ところで、ソフィア。あのとき、バンに胸を突かれていたはずだけど、どうして無事なんだ」
「うん、これに当たってたから、私には刺さらなかったの」
そう言って、胸からペンダントを取り出す。
弟の写真が入ったそのペンダントは、バンの攻撃で壊れていた。
「そうか。ペンダントに当たってたから、体には刺さらなかったんだな」
「うん。本当に偶然だけど。そのおかげでレイスを助けられた。ペンダント様様よ」
「きっと、弟さんが助けてくれたんだよ」
「ふふ。そんなオカルト信じないわよ! レイスって意外とロマンチストね」
ソフィアはそう言って背中を向けてしまう。
だが、ペンダントを握りしめて小さく「ありがとう」とつぶやいていた。
これで本当にすべてが終わった。
◇ ◇ ◇
宿に戻ろうとすると、お父様とミアが待ち構えていた。
「おお、我が息子よ! よくぞ、悪名高き盗賊団を捕まえてくれた! やはり、次期領主はお前しかいないな!」
「レイス! 私の婚約者! 勇ましいのね。惚れ直したわ。さあ、戻ってきて将来のことを話し合いましょう!」
二人とも、ウィリアムが捕まったことで、俺に鞍替えするつもりらしい。
なんという変わり身の早さか。
「お父様。俺はもうアルバスノット家の人間ではありません。今はソフィアの奴隷。お引き取りください」
「いやいや、お前こそが偉大なる息子だ! 空間魔法を使いこなす稀代の天才! レイス・アルバスノット、その人だろう!」
「そうよ! 私の可愛いフィアンセ! 将来を誓い合った仲でしょう? 純潔を捧げるのに相応しいのはあなただけよ!」
俺はため息をつく。
「ミア、俺が追い出された日に、ウィリアムとお楽しみだっただろう? それで今更フィアンセはないんじゃないか?」
「な、なななな、なんでそのことを知っているの!?」
逆にバレていないと思っていたのか。
俺が呆れていると、ソフィアが二人の前に出てきて説教をする。
「あなたたち、レイスのことを見捨てておいて、よくもいけしゃあしゃあと自分勝手なことを言えるわね! 恥を知りなさい! それからね、レイスは私の将来の旦那様なのよ! わかったらとっととハンカチを噛みしめながら消え失せなさい!」
おー、こわ。
「ていうか、俺のことは弟みたいに思っているんじゃなかったのか?」
「弟よ? そして、将来は旦那様になるの。なにか問題ある?」
ソフィアは美しい顔で微笑む。
「ざっけんじゃないわよ! レイスは私の婚約者なの! もう決まってるの! おじさまもなんとか言ってやってよ!」
「そうだ、レイス。謝ってるじゃないか。大人になれ。戻ってきて私のために働くのだ!」
「厚顔無恥ってのは、こういう奴等のことを言うんだなぁ……」
逆に感心してしまうほどだ。なんとも厚かましい。
俺たちが言い争っていると、冒険者ギルドの人たちが現れる。
「ウィリアム・アルバスノットの御父上と、その婚約者のミア様ですね?」
「な、なんだお前らは……」
「なんの用よ」
「ウィリアム様が先ほど自供なさいました。今回のことは全て御父上とミア様で共謀したことだと……」
「は、はあ!?」
「なによそれ! 聞いてないわよ!」
「一度、署までご同行ください」
お父様とミアは「自分は関係ない」と喚き散らしたが、ウィリアムが証言したことを無視するわけにもいかない。
結局、冒険者ギルドの人たちに引きずられて行ってしまった。
あとには、俺とソフィアだけが残された。
「行っちゃったわね……」
「今の内だ。さっさと旅に出てしまおう」
俺たちは次の目的地へ出発することにした。
今日は快晴。
気持ちよく新しいスタートを切れそうだ。