13
「ソ、ソフィア!」
倒れるソフィアを受け止める。
なんで、どうして。
あんなに戦うことを嫌がっていたのに。
「う……レイス、無事なのね……よかった」
「ソフィア、どうして俺なんかのために!」
「い、言ったでしょう。もうなにも失いたくないって。弟を二度も失うなんて、絶対嫌だったから、だから、私、レイスの言った通りに戦いに来たの」
なんてことだ。
俺のせいで、ソフィアまで……。
「レイスを守るために戦えて、よかった。どうか、生きて……」
「ソフィア……」
俺はソフィアをその場に寝かせ、バンに向きなおる。
「もういいか? 待つのも飽きたぜ」
「ほざけ。 俺のスキルが怖いから、自分のクールタイム中に離れていただけだろ」
「その通り、お前のスキルのタネは明かされた。もう勝ち目はないぞ」
「それはお前だって同じだろ。このクソ外道が!」
ソフィアは「生きて」と言ってくれた。
だけど、こいつだけは許せない。
ソフィアとソフィアの弟を殺したこの男だけは。
◇ ◇ ◇
「くらえぃ! ファイアーボール!」
「ただの炎の弾だろ! なにがファイアーボールだ! かっこつけるな!」
炎の弾を躱し、ふたたび走り始める。
今度こそ、奴に近づいて金縛りをかけてやる!
俺はあたりにある木材や資材を投げまくった。
乾いた地面にぶつかり、土煙を上げる。
「ちぃ。目くらましか!」
これが俺の作戦だ。
土煙を上げてバンの視界を悪くし、その隙に近づく。
即興では、これ以上の作戦は実行できない。
シンプルだが、この作戦にかけるしかない。
土煙をどんどん濃くする。
あたりが全部覆われるほどだ。
「ごほっ、ごほっ、あの小僧、どこに行きやがった」
俺は足を止める。
足音で気づかれる可能性がある。
ここからは慎重に近づくんだ。
「くっ。こっそり俺に近づこうって腹か。見つけ出してファイアーボールの餌食にしてやる!」
バンは闇雲にファイアーボールを撃ちまくる。
風圧で土煙が晴れていく。
「はっはっは。どうだ。お前の作戦もこれでご破算! 風圧で見通しがよくなったぞ!」
そして、バンはとうとう俺の姿を捉えた。
「見つけたぞ! そんな離れたところにいやがったか! 臆病者め! これでお前の作戦はすべて看破したぞ! 俺の勝ちだ!」
だが、バンが見つけた俺の姿は、蜃気楼のように消えた。
代わりに立っているのはソフィアだ。
「なっ! バカな! お前は死んだはずじゃ!」
「レイス! 今よ!」
バンの背後からこっそり近づいていた俺は、とどめの一言を発する。
「三秒金縛り!」