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9 いとこ
「久しいのう。惣佐衛門!」
朝一でそいつの屋敷に行った。屋敷?言い過ぎた。長屋。こりゃ、コネになるかカオが効くか微妙だな。
「実はな、幸之進、頼みごとがあって馳せ参じた。すまぬが、土木の責任者にお目通り願えぬか?」
「それならば、お安い御用だ。私の知り合いに責任者の倅がおる」
お前すげぇな。急に光輝いて見えたぞ。
……明日の夕刻、お時間を頂けることになった。
取水予定の沢から田がある低地まで軽く見て、10km程、下手すると15kmはある。山の尾根伝いに堀を作る。出来るだけ、直線で掘りたいが、途中は固い岩が頭を出していた、というより、岩そのものだ。あんなのどうやって削るんだ?
まあ、いい。それは俺の仕事……では……ああ、ない……いいいい……うっ。