6 絵図
「兄上? 何をされておられるのですか?」
「ああ、絵地図だ。これを見せて、いかにこの計画が重要かを役人どもに説明するのだ」
「さすが兄上、尊敬いたします!」
俺を見つめる、涼香殿。すっごい可愛い!ほんと可愛い。もっと褒めて、ねえ? もっと。
10km先の山の中、凡そ200m高い位置にその沢はあった。北に向かって流れて、恐らく、その先の川へと流れ込んでいると思われる。俺達の見つけた場所から取水口を作り南東の方角へ用水路を作るには、まず、周囲の岩をどうにかしないとダメだ。岩を削って掘割を5km程通して、途中、吉左の教えてくれた沢で一旦、落とし込んでそこから、また引き込んでくる。軽く見て10kmは超える大仕事だ。お上の奴ら、どこまで、とり合ってくれるだろうか?
「兄上、格好良い!」
俺が真剣に筆をとって書き記していた横顔を見て、俺の可愛い妹殿がとうとう我慢できずに口にした本音だ。
「ふっ、涼香殿、兄は格好良すぎるだろう?」
「はい、喋らなければ最高です」
おっと、なんか棘のある感じだ。笑顔で俺をいじめる妹を軽く無視してやった。
次回、お役人に会いに行ったけど、悪い癖出ちゃったの巻き。