4 伝説
「こうな、こう構えて、突進してくるのでな、それを兄はひらりとかわして、刹那、奴の横腹を一文字に切り開いたのだ、さしものおこと主も兄の渾身の一撃には耐えられずに膝から崩れ落ちると二度と立ちあがって来る事は無かった。しかし、あの一撃をかわされたら兄も、どうなっていたか……既に、兄自身も気力だけで立っているような状態であったしな、斬り結んでから、1時間は優に超えていた、実に危なかった……」
俺は、遠い目をしてその時の事を愛する妹に物語していた。夕食の終わった座敷で。
俺の傍らには羨望のまなざしで俺を見つめる涼香殿が……
「兄上、それでその時の御傷がそのお腹の青あざなのですね!」
「うむ。最初こそ、たかが猪と兄も油断していたのだが、戦ううちにそいつはどうもこのあたりの主のようでな、体高も2mを超えていたのでな、間違いあるまい」
「兄上、でも、あまりご無理はなさらにでくださいまし、私……兄上が猪に食べられでもしてしまったら、一生、泣いて暮らすようになってしまいます。
もしも、そのようなときは……尼になります……兄上への想いとともに、一生、祈りを捧げて暮らします」
すまぬ妹、少し、いや、かなり盛った上に、一部脚色している、一部じゃねえな。
物語とはこうやって生まれるものなのだ。お前も大人になれば分かることよ。
次回、見つけたよ水源の巻き!




