34 後悔
「惣佐衛門殿、祝言は来週ですよ、その日は、松岡まで一緒に行って先方にご挨拶してくださいね。嫁入り道具やら何やら運ぶ人工の手配も致しましたので、惣佐衛門殿はただ、紋付羽織袴で行って帰ってくれば良いだけにいたしました。聞いておられますか? 母は話しましたよ」
いよいよ、涼香殿は来週に輿入れか……………………
この村にも灌漑用水が引くことが出来た。これから……この村も水不足に悩まされることは無いだろうな……俺は、誰の為にこの水を引っ張ってきたのだろう。百姓の為?そうだ、百姓の為。でも、俺はあの時、やると決めた時……もう一つ自分の為にやろうと決めていた。
涼香殿と末永く夫婦として一緒に生きていくために。
自信が無かった。全てに。父上の後を継いだものの何もない俺には全てが怖かった。だから、いつも逃げていた。
それなのに、そんな俺にいつも逃げるなと言ってくれていた涼香殿の期待に答えたくて、俺はこの難工事を始めたのに、なのに、どこで間違えたのか……………………俺は、あの時、思った。
縁談の話が来た時、水不足に悩むこの村から出た方が楽な暮らしが出来ると思った。
……違う、
どこかで、やっぱり逃げていたんだ。どこかで、工事が上手くいかなくなると思っていたから、自分を、一緒にやってくれている仲間をもっと信じていれば、逃げなければ、こんな事にならなかっただろうに。




